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早くも今年のベスト&ワースト!? Netflixの大型映画3本を辛口レビュー

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 大作オリジナル映画のうち、ぶっちぎりのワーストだったのは、デヴィッド・ボウイの息子で、カルトSF映画『月に囚われた男』(’09年)の監督ダンカン・ジョーンズによる『ミュート/MUTE』です。

mute/ミュート

『MUTE/ミュート』

『月に囚われた男』、『ミッション:8ミニッツ』(’11年)と、コアなファンからの評価が高い映画を撮ってきたジョーンズ監督。前作『ウォークラフト』(’16年)は、過去に何作もが爆死してきた「ゲーム原作映画」にチャレンジし、あえなく失敗してしまいましたが、今回Netflixで配信された映画はお得意の近未来SF映画。

 しかも、『アントマン』(’15年)で知られるポール・ラッドなどキャストも豪華で、スタイリッシュな予告編からも期待が持たれたのですが……。

クセのある登場人物たちが複雑に絡み合う

 あらすじはタイトルにあるように「ミュート=口の聞けない」主人公が、失踪してしまった彼女を追うというもの。

 そのほかに、バツイチで闇医者をしながら娘を育てている脱走兵、同じく闇医者でロリコン趣味の男が登場。謎を追いつつ、ひと癖もふた癖もある登場人物が絡み合い、その中心には怪しげな女が……。

 そんなノワール作品のようなテイストとSFの相性がいいのは、昨年続編が公開された『ブレード・ランナー』(’82年)を観てもわかるでしょう。

 実はノワール映画では、こういった登場人物の背景や、途中に出てくる細かな伏線が回収されないことは決して珍しくはありません。『ミュート/MUTE』で言えば、主人公が喋ることができない、闇医者が脱走兵、闇医者のパートナーがロリコン趣味などの要素です。

どこか何か物足りない本作の主人公

 では、何が観る者の心を掴むのか? ジャンル名のとおり闇(=ノワール)です。極論を言えば、やさぐれた男と怪しくセクシーな女が出会い、そうこうするうちにお互いドツボにハマっていく様子がカッコよければ、それでいいのです。

 ところが、今作はまず主人公の“ドツボ感”がまるで足りない。話すことができないという設定なので、なおさら動きや表情は重要ですが、それも複雑なストーリーや周りの登場人物の演技に埋もれてしまった印象。

 豪華な視覚効果や未来都市のデザインには目を奪われますが、主人公の心情の変化はサッパリ伝わらずという皮肉な結果になってしまいました。「消えてしまった女を追う口の聞けない男」にフォーカスするのではなく、闇医者コンビと並行して話が進むのも、事態を悪化させているかもしれません。

 そんな本作の「ロッテン・トマト」での支持率は13%!「メタクリティック」では35点でしたが、視覚効果を抜きにすると、見どころはかなり少なかったです。

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