H&Mやナイキ、ユニクロにも余波。ウイグル問題で、中国での不買運動広がる
難しい立場の日本
このような不買運動は日本にとっても対岸の火事ではない。不買運動を巡る動きの原因は、強制労働を強いられるウイグル人が作った新疆ウイグル産の綿花を使わないことだった。
すでに国内大手アパレルのファーストリテイリングは2020年8月に声明で、主力ブランドのユニクロについて「新疆ウイグル自治区で生産されている製品はない」と発表したことに対し、中国の俳優3人がCM契約の解除を申し出る事態も起きている。彼らは「悪意あるデマを阻止する」と主張していて、背景にウイグル問題があったことは明らかだ。
そして、日本政府はウイグル問題を巡っては欧米と中国との間で非常に難しい立場にある。
欧米のように中国に制裁を発動しなくても、日本政府がウイグル問題を強く非難、もしくは今の姿勢を維持していれば、ユニクロのように他の日本企業が不買運動の標的になる可能性がある。
欧米と中国との対立は長期化する?
過去には、2005年に当時の小泉首相が靖国神社を参拝した際、中国では反日感情が高まり各地で日本製品の不買運動が起こった。
また、2012年には当時の民主党政権が尖閣諸島の国有化を宣言した際には、反日デモが各地に広がり、不買運動を超えてトヨタやパナソニックの店舗・工場が放火され、日系デパートやスーパーは破壊や略奪の被害に遭った。
今回の問題に端を喫してアメリカを中心とする欧米と中国との対立は長期化するはずだ。そして、その影響は日本でいえば尖閣諸島のような安全保障上の問題にのしかかるが、身近なところに危機はは迫ってこないと思う人が多いかもしれない。
今日の世界情勢では軍事衝突のリスクが高い分、経済領域が対立の主戦場となるのである。今回の制裁発動と不買運動はその一環と言えるだろう。
<TEXT/国際政治学者 イエール佐藤>
12