国道沿いに「3軒のスーパー銭湯」なぜ鶴見は“銭湯激戦区”になったのか
「おふろの国」の個性派独自路線とは
「隣のヨコヤマユーランド鶴見さんはご高齢の方に、らくスパ鶴見さんは若い女性の方が多いので、うちはうまく住み分けができていると思う」と話すのは、「おふろの国」店長の林和俊さん。
「個人的に好きだったプロレスを店内で発信してみたら、同世代の方々からかなり好評でした。駐車場にリングをつくりプロレスのイベントや、熱波師甲子園というサウナのイベントを開催しました。いまでは『プロレス』『サウナ』はうちの個性になったと思います。今後はSNSを活用してお客様とともに、お店をより一層もり上げていきたいです」
筆者とお風呂で一緒だったフィリピンの女性2人は、「日本へ出稼ぎに来て、初めてお風呂に入った。はじめは熱くて驚いたけど、今ではお風呂が大好き! 週末は2人で来て湯船に浸かりながらお互いの家族のことや、仕事のこと、ときに恋の話もするのよ」と、ニコニコ顔で話してくれた。
「RAKU SPA 鶴見」はファミリー層に人気
「ヨコヤマユーランド鶴見」「おふろの国」はそれぞれの個性を出すことで棲み分けを図っている。ではもうひとつの「RAKU SPA 鶴見」はどうだろうか。他店舗を経て2018年から「RAKU SPA 鶴見」の店長となった株式会社極楽湯の笠川翼さんはこう話す。
「お客様は若年層やファミリー層、鶴見の土地柄からか外国人の方も多い。施設の一番の特徴は岩盤浴が充実していること。種類も多く女性から人気を集めている。また、人気漫画とのコラボイベントや夏休みのお化け屋敷イベントなど、お風呂だけではなくレジャー施設としても楽しんでもらいたい」
株式優待券で全国のスーパー銭湯めぐりをしているという北海道在住の75歳の男性は「学生時代の友だちと会うために日本をまわっている。優待券のおかげて各地のお風呂も楽しめて、いい経験になっているよ。今日もお風呂でさっぱりした後、20年ぶりに友だちと会って上野に飲みにいくんだ」と語り、はりきって送迎バスに乗り込んだ。
なぜ鶴見の街にはスーパー銭湯が3軒並び、共存できているのか。それは鶴見という土地柄の成り立ちと細分化したニーズへの経営努力によるものだった。
鶴見の銭湯の歴史は、日本の工業発展の歴史ともいえる。銭湯は労働者の汗とともに発展したのだ。今回見たように今では銭湯に加えて大きなスーパー銭湯も立ち並ぶ鶴見だが、時代が変わっても人が湯船につかるとホッとする気持ちは変わらない。多様化していくお風呂市場の中で、私たちにとってどれもが安らぎの場所であることに変わりないだろう。
<取材・文・撮影/緑川アイラ>