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「欅坂46パン屋事件」の真実。なぜネット炎上したのか、店主に聞いてみると

暮らし

アメリカ留学で身につけた指導法

欅坂

「デッセム」のGoogle評価。現在は高評価に落ち着いている

「叱り方はいろいろあると思うんですが、私は物事をはっきり言います。『YES or NO』をはっきりさせる。この方法を身につけたのはアメリカでの経験です」

 廣瀬さんは日本の大学を卒業後にアメリカに留学。その際にアメリカのパン屋さんで働き始めた。そしてアメリカに留学していた2年8か月間に、現地で副工場長になっていた。当然、周りに日本人は自分だけという状態で80人の従業員の指導をしていた。

「アメリカで、従業員の方々に指示をするときに『そのやり方もいいよね』というような曖昧なことを言っていたら通用しません。いろいろな国籍や出自の人がいるから、統率も取れないんです。私自身も『君もいいけど、彼もいいよね』と言われても、一体どっちなんだと思ってしまいます」

 昨今はパワハラや若手社員の自殺といった問題がクローズアップされたことで、叱られた経験自体がないという若いビジネスマンも多くなっている。歓迎すべき話にも見えるが、廣瀬さんはどのように思っているのだろうか。

叱られ慣れていない若い世代に思うこと

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「世代による変化は必ずしも悪いことだけではなく、良い面もあります。今の若い世代はある意味では非常に打たれ強いです。私が若かった頃に比べれば、努力もしているし、根性があると思います。ただ、若い人と接するときに、どこまで響いたのか判断できないこともあります。話したことがどれだけ心に刺さったのか、それが見えづらいんです。もちろん、そう思ってしまうのは私の経験不足、勉強不足な面もあります」

 廣瀬さんは間もなく70歳。パン屋を開業して以来、これまで28人の弟子がパンづくりを学び、そして各々の看板を持つ形で独立していった。

「多くの世代、多くの人を指導してきましたが、今の若い世代の置かれた環境は恵まれている一方、彼らを叱る人はもっと必要だと私は思います。怒る人でなく、叱る人です。もちろんそこにはお互いの信頼関係が必要です。上司も相手の気持をわからないとダメだと思います」

 廣瀬さんのように、目上の人が若い人を叱るということは珍しいことになった。もちろんハラスメントになってしまっては問題だが、この記事を読んでいる若手ビジネスマンが上司に怒られているときは、こうした言葉を思い返してみてもいいかもしれない。

⇛インタビュー後編<69歳パン職人、「欅坂46パン屋事件」でも挫けない“仕事へのこだわり”>に続く。

<取材・文・撮影/菅谷圭祐>

大学受験情報誌、IT情報サイトなどでライター経験を積み、2018年よりフリー。最近の趣味は休日の農業、リサイクル業も兼業
Twitter:@sugaya_keisuke

【自然酵母・無添加の会員制ベーカリー「デッセム」】
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