「欅坂46パン屋事件」の真実。なぜネット炎上したのか、店主に聞いてみると
パンに対して失礼であってはならない
そもそも廣瀬さんが2人を叱ったのは返事についての指導だった。廣瀬さんがパン作りについて教えても、2人は黙ったまま。聞いているのか、聞いていないのかわからないことに対して、声を上げたのだ。
「相手の言うことがわからなければ返事をしてほしいと言いました。『はい、なんでしょう』『はい、どういう意味ですか』と返事をしてほしい。『はい』という返事ができないというのが叱る要素でしたね。ただ、彼女たちに腹を立てたとかそういったことではないです」
とはいえ、欅坂46のメンバーはテレビ番組の収録で1日だけの関係だ。それだけの関係性と割り切って、叱らずに1日を終えることは考えなかったのだろうか。
「それはできないですね。一歩厨房に入ってしまえば、誰であろうと、1日だけであろうと関係ありません。パンを前にしたら、パンに対して失礼であってはならないと考えています」
炎上をものともしない力の源泉
「私は全く気にしていないんですよ。そもそも保存剤や安定剤などを使用しない無添加のパンは、今でこそ当たり前となりましたが、私は1980年の頃から無添加のパンを作り続けています。当時は、今ほど食品添加物や農薬に対する社会的な関心も高くなく、強い逆風のなかに身を置かざるを得ない状況でした。誰に雇われたのかわかりませんが、ヤクザまがいの人から突然電話が来て脅されるということも何度もありました」
無添加パンにおける第一人者で、当時から信念を曲げずにパンを作り続けている廣瀬さんにとって、ネット上の炎上は何ということはないようだ。
「実際に私のパンを食べて支持してくれる人が数多くいることも大きな支えになっています」。当然ではあるが、ネット上の炎上は社会的評価の全てではない。むしろそれはごく一部の評価でしかない。廣瀬さんと、廣瀬さんのパンを愛する人たちの関係性で、そのことを改めて思い知った。
ところで廣瀬さんは、はっきり物を言う指導方法をどこで身につけたのだろうか。そのルーツにあるのは意外にもアメリカだった。