会社員から仏門に。坊主バー店主「コロナ禍で再確認したもの」
コロナで売上は前年比5割減に
――現在、新型コロナウイルス(以下、コロナ)の影響で経営が厳しくなっているお店は少なくありません。坊主バーへの影響はありますか。
源光:前年同期比で5割減という状態です。確かに厳しいことは厳しいですが、それでも半分来ていただいているだけいいかもしれないという思いもあります。私も商店街の一員なので、閉店や撤退をしたというお話をよく聞きます。
――バーはコロナの影響を大きく受ける業種のひとつかと思います。
源光:そうですね。ただ、そもそもコロナの前から景気が良い状態だったかというとそうでもないです。今は宅飲みも定着していて、わざわざバーで飲むという人がコロナ以前から減ってきていました。
コロナで失われる、空気を読む力
――今では新しく「Zoom」飲みのようなネットを介して飲み会をするという方法も定着しつつあります。これは、今後コロナが落ち着くことがあっても文化として残るかもしれません。
源光:今はコロナの影響で仕方がない面もありますが、私は直接会うことができない状況というのは長い目で見ると損をすることになると思っています。
というのも身体性が介在しないので、ある意味では「非常に安全」すぎてしまうからです。人と人がぶつかりあわないので鍛えられないんです。空気を読むという言葉がありますが、そういった感性が損なわれることにつながるのではないかと思っています。
――その観点から見るとバーは、鍛えられる場と言えるかもしれません。
源光:私自身、今回のコロナ禍を通じて、バーという場の価値を再認識しました。直接人に会って話す、交流するという場所はやはり大切です。
意外に思われるかもしれませんが、最近は若いお客さんがよく来てくれるんですよ。コロナの影響もあり悩むことが多い時代です。ひとりの宗教者として、人生のいろんな悩みにもお答えするのでぜひ気軽に遊びに来てほしいですね。
<取材・文/菅谷圭祐 撮影/荒熊流星>
【釈源光】
浄土真宗・真宗大谷派瑞興寺僧侶。1953年神戸市生まれ。パリ大留学より帰国後、政治家秘書、広告代理店、スーパーゼネコンなど数々の転職を経て、50代を目前にして仏門に入る。2014年より東京・中野「ワールド会館」で坊主バーの経営者も務める