吉岡里帆、今の自分を作ったのはエキストラ時代の原体験
2020年3月の第43回日本アカデミー賞では、映画『見えない目撃者』と『パラレルワールド・ラブストーリー』の2作で新人俳優賞を受賞し、いまや実力派女優としての地位を確立しつつある吉岡里帆さん(27)。
吉岡さんは11月20日(金)より新宿ピカデリーほか全国で公開されている映画『泣く子はいねぇが』で、初めての“母親役”を熱演しています。主演であり夫を演じるのは同い年の若手実力派・仲野太賀さん。
今回は、吉岡さんに、これまでのイメージとは異なる役どころに対する思いや、女優としての仕事論や、今後のキャリアにも迫りました。
初めての“母親役”は「うれしかった」
――「いつから人は大人に?」「大人になるとは?」という、誰もが経験する人生のテーマを描いた作品でした。
吉岡里帆(以下、吉岡):この映画が描くのは普遍的なテーマだと思いました。子どもが生まれたばかりの青年(仲野太賀)が、どう親大人になっていけばいいのか、どういう父親になればいいのかと葛藤するお話で、誰もが通過しうる人生の出来事ですよね。
わたしは出産経験がないので想像の範囲ですが、母親は自分のお腹の中に赤ちゃんがいるので、生まれるまでの時間を共有できると思うけれど、父親は生まれてから初めて子どもに触れる。父親になるっていつなんだろうって、その葛藤が自然に描かれていて、仲野さんが演じる主人公も含めて、すごく説得力のある脚本だなと思いました。
――本作のようにメッセージ性が強い作品に関わると、俳優として思いを新たにすることもあったかと思いますが、その点はいかがですか?
吉岡:まずオファーをしてくださった気持ちがすごく嬉しいので、自分がベストを出せそうであれば積極的に参加したいと、いつも思っています。仕事の内容で、やるやらないと選ぶようなことではなく、どちらかというといろいろなことにチャレンジしながら、そこでベストを探るというスタンスで仕事をしています。
選びすぎると自分で自分を狭めちゃうと思うので、今回の『泣く子はいねぇが』だけじゃなくどの作品も同じように、監督、プロデューサー、その作品をやってみようと旗揚げされた方の想いに応えられる限り応えたいと思っています。
苦手なことこそ、直感的に選んでいる
――俳優として期待に応えていくスタイルということですか。
吉岡:そうですね。どういうキャラクターにすべきか、どういうスタンスで仕事をするべきか、仕事によって全然バラバラなので、自分はこうだって決めつけず、柔軟性をもって柔らかい心で仕事をしていくことを心がけています。この今回の『泣く子はいねぇが』も、監督が長年積み重ねてきた作品への想いをなんとか汲めたらいいなと思って撮影に臨みました。
――苦手なことの場合、腰が引けませんか?
吉岡:自分の得意分野でないほうが発見が大きかったり、新しい可能性に出会えることが多いので、むしろ直感的に苦手だなと感じるものにもチャレンジしています。作品のテーマも、自分に向いているだろうなというものと、わたしへのオファーに意外性があるものであれば、意外なほうに惹かれます。自分の新しい側面を引き出そうとしてくださってると思うと嬉しくて。そういう期待に応えたいと思っています。