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サブウェイ、サーティワン…海外の外食チェーンが日本でウケる秘策

ビジネス

サーティワンを「旭山動物園」にする?

サーティワン

サーティワンアイスクリーム東京ドームシティラクーア店 CC BY-SA 3.0

 同じくアメリカ資本の「サーティワンアイスクリーム」は、私も店舗をいくつか設計していますが、ロゴデザインや店の主役であるアイスクリームのショーケースは本国のデザインを踏襲するのがルールなので、大きなイメージチェンジはできませんでした。

 もしデザインを大きく変えられるなら、ターゲットとなる日本の10~20代女性に訴求するカワイイ系のロゴにします。さらにショーケースを刷新し、シロクマやペンギンが意外なアングルから楽しめる「旭山動物園」や「サンシャイン水族館」の展示のようなデザインにします。アイスクリームを意外なアングルから見せたら、今までとは違う新鮮なイメージをアピールできるのではないでしょうか。

 こうした海外のマーケットで好まれるデザインと、日本国内で好まれるデザインは当然ながら異なります。本国のブランドを守ることも大切かもしれませんが、日本で展開するなら、日本人好みのデザインに変える柔軟な姿勢が必要です。ちなみに私が外国に出店するときは、どんな業態の店であれ、現地スタッフの声に耳を傾け、現地のニーズに合うデザインやテイストを必ず取り入れます。「日本の規律を守れ!」などと日本のルールを押し付けたりはしません。外国資本の店ほど、「郷に入れば郷に従う」のが成功の早道なのです。

1店舗作るために、100店舗は見る

設計

 以前、中国で日本料理チェーン店の出店を検討していたとき、ある担当者が「ここは人通りがすごく多いから、きっと売れるでしょう」と言いました。しかし、実際にその通りを歩いている街の人たちの平均賃金を調べると、店の設定単価とはかけ離れていました。どんなに人通りが多くても、現地のマーケットに合った店づくりをしなければ収益にはつながりません。リサーチをするときには、表層的な面だけでとらえるのではなく、ターゲット層の嗜好や平均賃金などさまざまな角度からマーケティングをして、ターゲット層に合う価格設定やデザインにすべきです。

 もし私がそこに店を出すなら、現地のターゲットの平均賃金をリサーチし、安心して入れるようなリーズナブルなから揚げ屋や天ぷら屋にします。エントランスを開放的な造りにし、何を売っているのかが通りからも一目でわかるような店頭にショーケースを設置し、「1個元」などと価格を目立つように表示します。

 あえて庶民的なデザインにして、現地の人「に親しみやすさ」「気軽さ」「入りやすさ」をアピールする店舗をデザインします。昔から「店を出すなら、近隣の100店舗を見ろ」といいます。近隣にどんな店があって、どんな店が繁盛していて、どんな人が利用しているのか。そうしたマーケティングリサーチの積み重ねが、デザインに反映されなければなりません。私は以来、出店するエリアに必ず何度も足を運び、丁寧にリサーチしたなかで気づいた発想をデザインに落とし込むようにしています。

<TEXT/大西良典>

■ 大西氏がデザインを担当した有名外食チェーン店
なか卯/すき家/?野家/かつや/すた丼/ココス/ビッグボーイ/デンバープレミアム/牛カツ京都勝牛/千房/モスバーガー/フレッシュネスバーガー/サーティワンアイスクリーム/英國屋/まこと屋/味千ラーメン/ローソン/すかいらーくグループ/サトフードサービスグループ/ゼンショクグループほか多数

OLL DESIGN株式会社代表取締役。1978年、兵庫県神戸市生まれ。高校卒業後に神戸の三大ゼネコンに入社し、21歳で建築士になる。24歳で「なか卯」の店舗システム部にヘッドハンティングされ、27歳で「すき家」をはじめとする各種外食チェーンを運営する「ゼンショー」のグループ会社に出向。2010年に独立。東京と中国・上海に支社を設立、国内外で店舗デザインを展開

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