TikTokがインドでも禁止に。中国との対立がアジアで広がる意味
インドではTikTokの使用が禁止に
またインドでも中国への反発がこれまで以上に高まっている。今年6月中旬、両国の国境地帯のラダック地方で両国軍が衝突し、多数のインド軍兵士が犠牲となった。死者が出るのは45年ぶりだという。
これによって、インド国内では中国への反発が高揚し、一部では習近平氏のポスターが燃やされるなど市民による激しい反中デモも発生。
インド政府は6月下旬、ウェイボー(Weibo)やTikTokなど中国企業が運営する59のアプリ使用を国内で禁止すると発表した。同発表の直後、インドのナレンドラ・モディ首相が2015年4月から使用してきたウェイボーのアカウントも削除された。
中国を牽制するモディ首相
そしてモディ首相は8月中旬、首都ニューデリーでの演説で、テロリズムや拡張主義的な動きに対しては断固とした姿勢で対応するとの強い意思を表明した。特定の国を名指ししなかったもの、その演説は明らかに中国を牽制する内容のものだった。
モディ首相はこれまで中国批判はできるだけ回避してきたが、6月の軍事衝突以降態度を硬化させている。新型コロナウイルスの感染拡大によって、米中関係はますます冷え込んでいるが、今後は中国とインドというアジアの大国同士の争いがいっそう激化する可能性もある。
おそらくインド以外にも、アジア各国では同様の事態が発生していることだろう。近年、各国で中国に対する不満が渦巻いていたが、新型コロナウイルスのパンデミックは、これまでの負の感情をさらにエスカレートさせるものになりつつある。
<TEXT/国際政治学者 イエール佐藤>
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