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イオン、コロナでも増収増益を実現した底力。社員とバイトの声は

ビジネス

小売として働きやすい印象だけど懸念も

イオン

イオン © Tktktk

 小売りとしては社員・アルバイト共に条件がよく、働きやすい印象でした。特にアルバイトも、口約束で済ませることもある小売業において「契約回りがしっかりしている」点は好印象です。その一方で、イオン特有の事情として、社内テスト受験(社員)、面接前の計算問題(アルバイト)と、基本的なな学力が求められる傾向があり、勉強が苦手だった人には辛い局面もあるようです。

 また、子会社・関連会社を中心に、コンプライアンスが気になる事例がいくつか出てきました。まず、イオン関連の労働事件の判例として、「イオンディライトセキュリティ事件」がありました。これは関連会社の警備会社(イオンディライトセキュリティ)にて発生したもので、裁判の結果、警備員の仮眠時間を労働時間として認め、残業代支払いが命じられたというものです。

 さらに同社では2019年にも連結子会社(カジタク)が不適切会計を行っており、親会社のイオンに対しても50億円の損失を与える結果となりました。また、別の子会社2社でもそれぞれ、景品表示法違反で課徴金対象となる事例が発生しました。

 イオンライフ(2019年4月)では「イオンのお葬式」の「家族葬」サービスで追加費用が一切不要であるかのように誤認させました。イオンペット(2019年8月)ではトリミングサービスでシャワーに炭酸泉水を使っていないのに「炭酸泉使用」と表記し、またホテルサービスでの散歩が屋外で1日に2回行われるかのように誤認させたことが報じられています。

 そして、直近の2020年3月にもイオン銀行はデジタルサイネージや動画広告に優良誤認があったとして、に消費者庁から措置命令を受けています。これら1つひとつは致命傷にはなりにくいものの、短期間(1~2年)のうちに4つの子会社で発覚していることを考えると、企業体質に対する不安はぬぐえません。

イオン「ホワイト/ブラック度」判定

イオン:★★★☆☆

 事業の多角化に成功した企業です。通常、特定の事業で成功した企業の場合、他の事業を祖業(最初に立ち上げた事業)と比べて大きくできずに祖業頼みになり続けるケースが多いです。しかし、イオンの場合は「総合スーパー事業=イオン」の勢いが鈍化しても、他の成長事業(金融・テナント開発・ドラッグストア)が利益面でカバーできており、着実に業容を拡大することができています

 この点を「総合スーバーが伸び悩んだ」と表現する記事もありますが、その見方は正直、企業経営の難しさを無視した、短絡的すぎる意見だと感じます。事業を増やし、総合力で生き延びるのは決して悪いことではありません。事実、イオンカード/WAONも、イオンモールも、ウエルシア薬局も顧客に価値を提供した結果利益を出しています。

 また、社員・アルバイト共に労働条件が整えられているのは良いことですし、評価すべきだとも思います。

 ただ、その一方で、各種子会社の「気のゆるみ」と表現すべき不祥事が立て続いている点は看過できません。実際に公的機関(消費者庁・裁判所)から改善命令が出ている点は重く受け止めるべきでしょう。財務基盤は良好であり、小売業の中でも労働環境は良いほうだと考えられるので、今後のコンプライアンス意識改善のための原資も確保できるでしょう。良い点も多くある企業ですが、公的機関からの複数子会社への改善命令はどうしても無視できないため、評価は★3としました。

<TEXT/アラートさん>

ブラック企業を生き抜いた歴戦のプロダクトマネージャーが、公開情報からホワイトorブラックを判定し、率直な理由とともにお伝えします。
Twitter:@blackc_alert
note:ブラック企業アラート

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