香港で続く抗議デモ。今後、現地に行くなら気をつけるべきことは
香港で5月28日、中国が導入を目指す「国家安全法」に抗議する数千人規模のデモが発生し、デモ参加者360人近くが逮捕された。マスクを着用した市民らはペットボトルや傘などを治安部隊に投げつけた。
一方で治安部隊も催涙ガスや放水で応戦するなど、2019年の逃亡犯条例改正案に端を発する抗議デモを彷彿とさせる事態となった。昨年の度重なるデモでは、大量の逮捕者や負傷者が出るだけでなく、治安部隊が意図的に実弾を市民に向けて撃つなど世界を震撼させた。
国家安全法の採決は6月30日
香港の繁華街では多くの店が営業できなくなり、中国系の店は破壊された。現地の日系企業は業務の停止を余儀なくされ、駐在員や現地の大学に留学する学生たちは日本へ帰国することとなった。
国家安全法は、国家分裂や政府転覆、テロ行為や外国勢力の介入などを禁止することを目的としており、成立すれば、これまでのような抗議デモは違法扱いとなるばかりか、香港当局は容赦ない対応をこれまで以上にしやすくなる。
逃亡犯条例改正案より香港の高度な自治を脅かすであろう国家安全法の採決は6月30日となる見通し。それまでの期間で、いま以上の暴力が発生するのか、香港情勢の行方が危惧される。
筆者もデモ隊に遭遇した
実は、筆者は昨年秋にやむを得ず仕事で香港を訪れた。期間は1週間だったが、1回だけデモ隊に遭遇した。平日の夜に数万人規模の抗議デモが行われた際、香港島を東西に走る地下鉄車内で抗議デモから帰る若者グループが乗車していたのだ。
若者たちは、地下鉄内で香港政府に抗議する威勢のいい声をあげるなどしたが、乗客たちの一部からは拍手の声が聞こえた。また、お昼のランチの際には、香港の繁華街チムサーチョイ付近で、「Democracy for Hong Kong」や「五大訴求」(「逃亡犯条例改正案」撤廃などデモ隊による5つの要求)などと書かれた黒い垂れ幕を多く見つけた。
週末や平日の夜に比べ、平日の昼に大規模な抗議デモや衝突は見られなかったが「中国に反発と抵抗」する雰囲気が社会に蔓延していた。
現地の香港人たちと会話する機会は何回もあったが、特に若者を中心に中国への抵抗・反発は根強い。会った方々とは常に英語で会話をしていたが、話が政治的な話題になると、「中国は香港の自由と民主主義を壊そうとしている」と全員が主張していた。