在宅勤務で会社に「定期代を返せ」と言われた…返金する義務はある?
会社が勝手に定期代を廃止したら罰金刑も!
後藤先生はさらにこのように続けます。
「今回のケースは、会社が先払いした定期代の返還を従業員に要求し、その返還請求権と給与を相殺する、ということだと思います。そもそも会社と従業員が合意した通勤手当を廃止するには、前述のように不利益な労働条件の変更になるため、従業員の合意又は就業規則の改訂が必要となります。
かつ、前述のように、給与から相殺をするには、従業員との明確な合意が必要となります」
では、会社側が社員との合意がないままに、定期代の廃止や天引きをしたらどのようになるのでしょうか。
「会社が一方的に天引き(相殺)した場合は、労働基準法24条1項に違反し、会社には30万円以下の罰金が科されます」
正社員と契約社員の待遇差もNG!
このように、すでに払った定期代を会社都合で天引き(相殺)するのは違法で、ときには罰金が科せられることもあります。しかし、会社側から見たときに以下のような対応であれば可能なようです。
「週◯日以上出勤なら定期代、◯日以内出勤実費支給、などの線引は原則として可能です。ただし、事前に就業規則などでそう明記していればOKですが、会社が一方的に支払い基準を変えることはできません」
では、「正社員の通勤手当は出すが、アルバイトには出さない」などと言われたら?
「出勤日数が異なるからといって、正社員と契約社員(アルバイト含む)の間で不合理な異なる扱いをすることは、労働契約法20条に違反します。したがって、出勤日数に着目して手当を支給するなら問題ありませんが、例えば正社員か契約社員等かにより手当を区別することは、不合理な取扱いとして違法になる可能性もあります」
このようにすでに福利厚生として定期代が支払われている会社の場合は、権利として法律で強く守られており、会社側が一方的に廃止や変更をすることは困難なのです。