新型コロナで街から人が消えた…EU圏の駐在員が見た現状
噂されていた日本での感染拡大が明らかになってきた新型コロナウイルス。もはや経済的な影響は避けられない状態となっているが、日本に先んじて国境閉鎖など厳しい措置をとってきたEU圏でも、すでに日系企業が苦境に立たされている。
なかでも中小企業は甚大な損害が予想されているが、報道ではその現状が伝わってきていない。本稿では、パンデミック真っ只中のEU圏にあるポーランドで、大手自動車メーカーの部品などを製造する下請け企業に勤めている鈴木真幸氏(仮名・30歳)に話を聞いた。
WHOの特設サイトによると、ポーランドの感染者数は1221人、死者16人(3/27)と、“感染爆発”には至っていない。だが、隣国のドイツが感染者4万2000人以上と、非常にリスキーな状況にある。グローバル企業やEU企業の工場も多く、経済的な打撃は避けられないだろう。
近日中にも工場閉鎖の予定
まず日常生活では、飲食店の営業停止や公共交通機関の利用自粛、2人以上での接近禁止(もちろん家族は除く)と制約が多いが、こと製造業に関しては、現段階では通常運転だという。しかし、その日々もそう長くはなさそうだ。
「事務職などではテレワークの人もいますが、工場などは通常通り営業しています。ただ、ランニングコストを下げるため、近日中に1〜2週間休みにすることも検討中です。お客さんも休んでいるところが多いので」
鈴木氏が勤めるような中小企業は、大手メーカーからの発注ありきで動いている。上流の流れがせきとめられた場合、当然その影響を受けることになる。
「すでにトヨタがフランスやトルコなどの工場を閉めています。さらに、その下にいる最終的な完成品をメーカーに収める『ティアワン』も工場を閉めると言っているので、その下にいる『ティアツー』『ティアサン』の我々もそれに伴って閉鎖する予定です」
売り上げ70%減になる工場も
こうして工場を閉めた場合の被害想定も、新型コロナウイルスと同じく恐ろしいものとなっている。
「まだ工場には感染者がいないので直接的な被害は出ていませんが、最悪のケースで売り上げが50〜70%下がると見ています。おそらく、良いケースでも15〜20%ほど売り上げが下がるのではないかと。1年のうち、1~2か月工場が閉鎖されることになれば、それぐらいは下がるでしょうね。単純に言えば不景気になるということです」
新規の設備投資などはすべて白紙。さらには従業員の昇級を凍結しようという話も出ているという。
それでも、相手先が軒並み閉鎖になるなか無駄に営業を続けるよりは、工場を閉めてランニングコストを減らしたほうが賢明だと判断しているようだ。
「マイナスになることは間違いないので、今はそれに対してどうするかを考えています。工場が閉鎖する期間が長くなれば、レイオフなどもありえるでしょうね」
避けようのない事態を回避する方法を探り続けて、結果的に傷口を広げるより、早めに損切りをする……。淡々と語る鈴木氏の口調からはそんな意図が感じられた。はたして日本国内の企業がそれだけ大胆な対策を取ることができるだろうか。