ゲイカップルを演じた藤原季節「これは“ただの”同性愛者の映画です」
今泉監督は迷いながら撮り続ける
――今、絶好調の今泉力哉監督作です。藤原さんは『アイネクライネナハトムジーク』でもお仕事されていますが、今泉監督の演出はどんなものでしたか?
藤原:今泉さんは、現場でとても混乱してました(苦笑)。僕も氷魚くんも、「監督、大丈夫かな」と。
――監督は混乱を隠さないんですか?
藤原:全く隠さないです。「分からない!」って言いますから。だから毎日、監督と僕と氷魚くんで悩んで。僕は氷魚くんとロケ中、同じロッジに泊まっていたのですが、毎日、寝られなかったです。
今泉監督がすごいのは「これは正しいんだろうか」と迷いながらも撮り続けることです。そして、そのまま映画を作り上げてしまう。答えがないところに向かって船を漕いでいる今泉さんの強靭な心は本当にすごいと思います。
これから僕はかなり変わると思います
――答えがないからこそ、観客に受け入れられているのでしょうか。
藤原:そうですね。たとえば誰かを好きになることって、答えがない問題です。監督の映画って、回答がないまま感動に誘われて涙が出るんです。今回の作品も、ラストで涙が出ました。やっているときはしんどいですけどね。
――作品中に答えを描かないとしても、現場では明確に道筋を提示して動いていく監督さんが多いですよね? 今泉監督の現場は特殊なのでは?
藤原:かなり特殊です。とても大きな影響を受けましたね。これまでも真摯に向き合ってきたつもりでしたが、「今泉組」をやってからは、本当に全部の作品に対して、より一層真摯に向き合うようになって、ひとりの人間を演じることへのプレッシャーをすごく感じるようになりました。どうなっていくかは分かりませんが、これから僕はかなり変わると思います!