ゲイカップルを演じた藤原季節「これは“ただの”同性愛者の映画です」
モデル・俳優の宮沢氷魚さんが映画初主演を務め、主人公の恋人役を俳優の藤原季節さんが演じる、ゲイのカップルが社会の偏見や法的問題に直面しながら進んでいく姿を見つめた『his』が公開になりました。監督は昨年『愛がなんだ』が話題になった今泉力哉監督。
ゲイであることを隠して田舎で暮らす井川迅(宮沢)の前に、かつて迅に別れを告げ、その後女性と結婚した日比野渚(藤原)が6歳になる娘を連れてやってきます。離婚前の渚は娘の親権を妻と争っているところでした。
同性愛者でありながら結婚して子供をもうけ、かつての恋人の前に現れる渚という複雑な役柄を演じた藤原さんにインタビュー。作品について、今泉監督について、そしてご自身について伺いました。
同性愛の青年を演じて感じたこと
――同性愛カップルが主人公ですが、恋愛にしろ、家族愛にしろ、普遍的な感情が描かれていると感じました。
藤原季節(以下、藤原):同性愛の物語を描く映画って、海外にはたくさんありますし、そうした作品はもともと好きでした。いつか僕も同性愛者の役を演じていたいという漠然とした思いを持っていたので、お話をいただいたときはすごく嬉しかったですし、役者としてチャレンジできるという気持ちでした。
本作は同性愛であっても、登場人物は普遍的な感情を抱いていると思っていたんです。でも、実際に同性愛者の方々と知り合ったり話したり調べたりしていくうちに違うと感じるようになりました。
――違う?
藤原:普遍的な感情というのは、僕らの視点からであって、彼らのなかにはある意味存在していないと思うんです。自分たちが同性愛者だという前提を、なくすことはできない。あくまでも、同性愛者だからこそ抱く好きという気持ちと、そこで直面する壁や苦しみを描いた映画なんだと、今は思っています。
これは“ただの”同性愛者の映画です
――確かに、当事者の方々は小さい頃から周囲との違いであるとか、色んな体験をしてきているわけですよね。
藤原:普遍的な感情だと胸を張っていえるように、「これは“ただの”同性愛者の映画ですよ」と言えるように世の中がなっていかなきゃなと思いました。初めに言ったことを考えた上で、普通に存在している彼らの当たり前の話を表現できればいいと。
僕が演じた渚は、自分はマイノリティだと、特殊な人間に位置づけられていたと思うんです。そして「この孤独は誰にも理解されないんだ」「仕方がないんだ」と思っていた。それは渚自身の問題でもあったけど、裁判のシーンに向かって、渚の感情は変化していく。
自分たちは特別な人間じゃなくて、当たり前に存在している人間で、だからこそ、自分は奥さんに対して、人として許されないことをしてきたと認められるようになった。その変化が物語終盤の決断に繋がっていったのだと思います。