「面白ければ何を撮ってもいい。それがキャノンボール魂の原点」――大森靖子×岩淵弘樹<劇場版アイドルキャノンボール2017対談>
「アイドルをAV監督が撮影したら、果たしてハメ撮りまで辿りつけるのか?」
そんな壮大なテーマでカルト的な人気を博した『劇場版BiSキャノンボール2014』から3年の時を経て、ついに続編となる『劇場版アイドルキャノンボール2017』(監督・カンパニー松尾 渋谷HUMAXシネマ)が公開中だ。
AV界のレジェンド・カンパニー松尾が仕掛ける“キャノンボール”とは何なのか? 出演者の一人でもある映像作家の岩淵弘樹氏と、盟友・大森靖子氏が熱く語り合った。
相手にされず、情念だけ渦巻いていた2人
大森靖子(以下、大森):私、旦那との初デートで『テレクラキャノンボール』(※)を観に行ったのね。AVは普段からよく観るし、松尾さんは私にとってつんくさんと同じくらい尊敬する人。そんな大好きな監督の大好きな作品に、岩淵君が参加しているのが嬉しくて……。一時は完全に牙が抜け落ちて、おじいちゃんみたいになってたから。
※カンパニー松尾監督が手掛ける「キャノンボール」シリーズの原点。2014年には劇場版が公開され、ロングランヒットを記録した。
岩淵弘樹(以下、岩淵):2010年に豊田道倫さんのライブの打ち上げで出会って、お金がないから雨の中をどついたるねんのワトソンと大森さんと3人で原宿から中野まで歩いて帰った頃が懐かしいね。3人とも誰からも相手にされなくて、それでも何かを表現したいって情念だけは渦巻いていて。それで大森さんを撮ったんだけど(『サマーセール』)、ひどいもんだった。
自分の中の暴力性を制御できずに、ただ荒れ狂っていただけ。被写体である大森さんのことを、何ひとつ理解しようとしていなかった。結局、そんな作品しか撮れないから映像で食えないことへのコンプレックスだけが積もり積もって、何を撮ればいいのかも見失って、「みんなが幸せになればそれでいい」と諦めの境地に達しちゃってた。
大森:でも、今回の映画の中では、私の好きな“ちゃんと歪んでる”岩淵君だったよ。
「カンパニー松尾」という巨大な宇宙
岩淵:やっぱりカンパニー松尾という存在が大きいよね。2016年に結婚して、3日後にハマジム(カンパニー氏の主宰する映像メーカー)に入れてもらったんだけど、松尾さんを中心にみんな好きなことをして生きているわけ。
例えば、テレビなら枠や予算ありきで企画がスタートするのに、ハマジムの人たちは面白いと思ったらとりあえずやっちゃう。面白ければ何を撮ってもいい。それがキャノンボール魂の原点であり、「あ、俺も好きなように撮っていいんだ」って。そのとき、もう33歳だったんだけど。
大森:気づくの遅くない?(笑)。私もよくテレビに出るようなアーティストに「大森さんは自分の“核”を持っているよね」とか言われるんだけど、心の中では「あんたみたいな技術も処世術も持ち合わせてないから、裸一貫、核で勝負するしかないんじゃ!」って叫んでる。
岩淵:相変わらず、牙の剥き方がエグいな(笑)。まあ、そんな感じで映像の世界に舞い戻り、今回カメラマンとして参加することになった。ところが、撮影直前に急遽欠員が出て、俺とエリザベス宮地君がキャノンボーラーとして放り込まれることになったのね。