急増中の「爆破予告」冗談では済まされない!どんな罪になるか弁護士に聞いた

企業や役所、学校などへ爆破予告がメールなどで届く例が増えています。施設が臨時休館になったり、学園祭が中止になるなど、大きな影響が出ているものから、SNSで拡散している真偽不明の情報もあり、一部で混乱する事態となっています。そこで、爆破予告をした場合、どのような罪になるのか、アディーレ法律事務所の島田さくら弁護士に聞きました。
2025年主な爆破予告事件(10月〜11月)
- 10月15日:埼玉県内の複数の市役所や小中学校、幼稚園、保育園に襲撃および爆破予告
- 10月15日:VTuberイベント「Re:ねくすてーじ!」の会場に爆破予告
- 10月19日:福島県諸橋近代美術館に爆破予告、20日は臨時休館に
- 10月20日:京都府福知山市役所に爆破予告、容疑者逮捕
- 10月28日:静岡県の複数自治体や福島県の公共施設に爆破予告多数
- 10月30日:北海道教育大学に爆破予告
- 11月1日:北海道積丹町役場庁舎に予告、関連施設臨時休館
- 11月2日:東京科学大学大岡山キャンパスで爆破予告、工大祭中止
- 11月2日〜4日:神奈川県内の医療センターや広島県福山市の医療センターに爆破予告
- 11月8日:埼玉県三郷市役所に爆破予告
- 11月10日〜11日:東京都内および首都圏の複数大規模オフィスビルに爆破予告がSNSで拡散
爆破予告メールを送っただけでも罪に問われる
ーー企業や役所、学校などへ爆破予告をメール等で送った場合、どのような罪になりますか?
島田弁護士:実際に、自作の爆弾などを用意した場合には、「爆発物取締罰則違反」などの重い罪に問われる可能性がありますが、爆発物を用意しておらず、単に爆破予告メールを送っただけという場合にも、罪に問われる可能性があります。
爆破予告メールを送るなど、相手の意思を制圧するような行為をして業務を妨害した場合、「威力業務妨害罪」(刑法234条、3年以下の拘禁刑又は50万円の罰金)が成立します。この罪は、実際に業務が止まらなくても、妨害のおそれがある行為があれば成立します。たとえば、爆破予告を受けた相手が警戒しながら業務を続けた場合でも該当します。
さらに、爆破予告によってイベントが中止されたり、警備費用が発生した場合、刑事罰とは別に民事で高額な損害賠償を請求される可能性があります。自己破産すれば支払いを免れると考える人もいるかもしれませんが、破産法では「悪意による不法行為に基づく損害賠償」は破産しても消えないと定められているため、簡単には逃れられません。
冗談でも刑が軽くなることはない
ーー実際に爆破する意図はなく、冗談半分で送ったような場合でも罪に問われますか?
島田弁護士:威力業務妨害罪は、爆破する意思があったかどうかに関係なく成立します。動機や目的は、罪が成立した後に刑の重さや執行猶予の有無を判断する際に考慮されますが、「冗談だった」「悪ふざけだった」という理由で刑が軽くなることはないでしょう。そもそも爆破予告メールを送る行為に、刑を減らすべき正当な動機が認められることは考えにくいです。
現職の市議会議員が、市民サービス改善や市役所職員への叱咤激励という目的で、市役所に爆破予告文書を送り、業務を妨害したというケースがありました。裁判所は、威力業務妨害罪の成立を認めたうえで、「動機・経緯に酌み得る点があるとは言えない」と判断しています。
市議会議員が有罪になったケースも
ーー逮捕されたり、実刑になったりするのはどのようなケースでしょうか?
島田弁護士:逮捕は刑罰ではなく、刑事裁判を適切に進めるための手段です。そのため、罪を犯した可能性が高い場合でも、逮捕するかどうかは年齢や生活状況、犯罪の性質や態様などを踏まえ、逃亡や証拠隠滅のおそれがあるかどうかで判断されます。
一般的には、職に就いていない、住所が不定、同居家族がいないといった事情や、威力業務妨害罪の場合は同種の前科前歴がある、大きな被害が出ているといった事情があると、逮捕される可能性が高くなります。
また、刑の重さや執行猶予の有無を決める量刑判断では、前科前歴がある、多くの人に影響を与えた、被害額が大きい、反省していないといった事情があると、刑が重くなったり、実刑になる傾向があります。
先ほどの市議会議員のケースでは、前科前歴がないこと、家族が監督すると述べていることを理由に、懲役1年、執行猶予3年の判決が下されました。
[協力]
アディーレ法律事務所
島田さくら(アディーレ法律事務所)
弁護士。東京弁護士会所属。退職代行、不当解雇、パワハラなどの労働問題全般に精通。在日ASEAN加盟国大使館の領事担当官に対し、民間の法律事務所初となる労働法講演を行った実績を持つ。TVやラジオ、雑誌などメディアの出演歴も長く、幅広い分野への対応力にも定評がある。