「やさしくありたい」70周年を迎えた「カンロ飴」が掲げる新ブランドメッセージに込めた思いと未来

1955年に発売され、今年で70周年を迎えた「カンロ飴」。砂糖や醤油を使った素朴な味わいで、世代を超えて愛されてきたロングセラー商品が、新たな節目に立っています。アニバーサリープロジェクトとして掲げられたのは「やさしくありたい」という新しいブランドメッセージ。発表会や関係者インタビューから、その価値と未来への挑戦をひもときます。
これまでもこれからもやさしく寄り添う「カンロ飴」

カンロ飴の原材料は、砂糖・水飴・醤油・食塩といったシンプルなもの。和の風味を感じさせる素朴な味わいで、創業地である山口県光市をはじめ、全国の人々に長く愛されてきました。

発売70周年を迎えたことを記念し、カンロ飴を展開するカンロ株式会社は「カンロ飴 70周年プロジェクト」を始動。先日行われたプロジェクト発表会では、ブランドメッセージを「やさしくありたい」に刷新し、より人々の心に寄り添う存在を目指すとして意気込みを明らかにしました。

その一環として、従来より小粒サイズの「ちいさくなったカンロ飴」の発売や、adieu(上白石萌歌によるクリエイティブコンソーシアム)の楽曲を起用したブランドムービーの公開、さらにはアクセサリーブランド・HARIO Lampwork Factoryとのコラボアクセサリー展開など、多彩な取り組みが予定されています。

発表会に登壇した山口県光市の芳岡統市長は、カンロ飴と市民のつながりについて「光市では、小学校の授業でカンロ飴ができるまでの工程を学んだり、スポーツ大会で差し入れとして配られたりと、世代を超えて親しまれています」と紹介。
さらに芳岡市長は、「カンロさんの協力を得て、地元の飲食店などでカンロ飴を使った特別メニューを提供する施策も進めています。市民にとって身近な存在であるカンロさんとともに、光市の魅力を発信していきたいと考えています」と、現在進行中の取り組みにも言及しました。
社長&ブランドリーダーが語る「カンロ飴」の価値と未来への挑戦

bizSPA!では、カンロ株式会社代表取締役社長・村田哲也氏と、同社マーケティング本部 カンロ飴・金のミルクブランドリーダー・菊地舞子氏の両者へインタビュー。70周年を迎えたカンロ飴の価値と未来について尋ねました。
──70周年という節目にあたって、改めて「カンロ飴」が持つブランド価値について教えてください。
村田社長:社名の由来にもなっている通り、カンロ飴は私たちにとって“原点”となる商品です。開発当時、カンロ飴の味わいの特徴でもある醤油を使った飴はなく、従来の製造方法では実現不可能と言われていましたが、創業者・宮本政一の度重なる試行錯誤を経て完成しました。カンロ飴には、看板商品としての役割だけでなく、チャレンジ精神や消費者に寄り添う姿勢といった、当社にとって本質的な価値が込められていると考えています。
──今年で創業113年を迎えるカンロ(前身の宮本製菓所を含む)ですが、ブランドを継続していくために意識していることはありますでしょうか?
村田社長:昔からあるものをただ受け継いでいくというだけでは、いずれか終わりが来るものだと思っています。「伝統とは古きをしのぐ新しき力なり」という言葉があるように、時代などに合わせて柔軟に変化をしていくことで、次世代にバトンを受け継ぐことができると思います。ただそのなかでも、カンロ飴のやさしい和の味わいといった唯一無二の価値はイズムとして持っておくことも大切です。
──カンロ飴の100周年に向けて考えているビジョンがあれば教えてください。
村田社長:1955年の発売以降、カンロ飴は世代を超えて多くの方々にご支持をいただき、70周年を迎えることができました。今後は世代だけでなく、海をも超えて愛されるブランドへと成長していきたいと考えています。カンロ飴は、日本らしさを感じられるやさしい味わいが特長です。和食が世界で支持されているように、日本ならではの食文化のひとつとして海外にも広がっていくよう、100周年に向けてさまざまな挑戦を続けていきたいですね。

──今回のリニューアルにあたって重視したポイントについて教えてください。
菊地さん:まずは購入ハードルを下げ、手に取ってもらいやすくすることを意識しました。パッケージを見ただけでどんな味なのかがわかりやすくすること、また「ちいさくなったカンロ飴」といった、いままでなじみがなかった人でも試しやすいサイズ感のものを用意しました。そういったリニューアルは、カスタマーセンターに寄せられた意見や、定性調査から得られたお客様の声をヒントにしています。

──若年層へ「新しい発見のある飴」として届けるために、どのようなマーケティング戦略を行ったのでしょうか?
菊地さん:カンロ飴の主な購買層はシニア世代であり、若年層への認知が下がっていることが課題でした。そこで、アクセサリーブランドのHARIO Lampwork Factoryさんとのコラボレーションや、adieuさんを起用したブランドムービーなど、ターゲット層にも身近な企業やクリエイターとの取り組みを展開し、多角的に認知を広げることを意識しました。また、代官山 蔦屋書店にて期間限定のポップアップイベントの開催も予定しています。70周年のアニバーサリーイヤーをきっかけに、さらに幅広い世代へ知られていくようにしたいです。