「ミスコン」ではなく“挑戦の市場”をつくった女社長の正体!

見た目の美しさだけでなく社会貢献や挑戦する姿勢を重視する「ミセスユニバースジャパン」。従来の“ミスコン”のイメージとは異なるこの大会、戸籍上女性であれば年齢、身長、婚姻歴の制限はなく応募できるといいます。この大会の理念や目的、そして出場者たちにもたらす変化とは? 運営するBellissima Japan株式会社代表取締役の大島一恵さんに話を聞きました。
専業主婦、会社員、政治家まで幅広い出場者

2025年のミセスユニバースジャパンには、さまざまな経歴を持つ39人が挑戦。7月15日に発表されたグランプリは、約15年人材採用に携わってきた経験を活かして昨年起業した42歳の統場久越さん(中央)でした。10月にフィリピン・マニラで行われる世界大会に日本代表として出場します。
――この大会の理念や、他のミスコンとの違いを教えてください。
大島:ミセスユニバースは1977年にブルガリアで始まった大会で、もともとはDVの多い地域で女性のエンパワーメントをテーマに誕生しました。私は2016年にこの理念に共感して日本に導入しましたが、「挑戦によって女性が自分の可能性に気づくこと」、そして「自分を良くするだけでなく社会にも貢献できること」に重きを置いています。そこから“優しさの循環”が生まれると信じています。
――最近ではルッキズムが問題視される中、単なる見た目の美の競い合いではないという視点が新鮮です。
大島:もちろん見た目も審査の要素にはなりますが、大事なのは“美しくなろうとする努力”や“自分をどう表現するか”という姿勢です。もともと美しい人や自信のある人に得点が入るのではなく、自分に似合うものや見せ方を研究する姿勢を評価する大会です。
――出場者にはどのようなバックグラウンドの方が多いのでしょうか?
大島:本当にさまざまです。医師、地方議員、専業主婦、会社員、自営業など多様な方がいます。今年は従業員200人規模の企業の経営者もいらっしゃいましたが、肩書ではなく「何かに挑戦したい」という気持ちが共通しています。コンテストをきっかけに起業される方も多いです。
ミスコンで評価されるのは存在そのもので人に何かを与えられる人

――大島さんがこの大会を日本で開催しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
大島:私自身、未婚時代にミスコンテストに出た経験があります。当時は「どうやったらきれいに見えるか」ばかり考えていましたが、実際に評価されるのは、存在そのもので人に何かを与えられる人なんです。そこから「自分に何ができるか」を考えるようになり、もっと多くの人にこの経験をしてほしいと思いました。
良妻賢母だった自分の母を見ていて、女性は結婚したら自分の好きなことは独身のときのようにはやれないと感じていましたが、ミセスコンテストを始めたことによって、本当に年齢や既婚・未婚に関係なく、その人自身で未来を切り開けることを逆に教えていただきました。結婚しても自由でいられるかは自分次第だと気づいたのです。
――大会を通じて、人生が大きく変わった方も多いと思いますが、特に印象的なエピソードを教えてください。
大島:35年間在宅介護士をしていた女性が、最初は自己肯定感ゼロだったのに、ミセスユニバースに2回、世界大会にも出場し、今ではコンテストの運営に携わってくれています。チャリティー部という部活を立ち上げ、後輩をサポートする立場になるほどに変化しました。「外見もきれいになって、性格も明るくなったね」と言われた彼女は、「変わったのではなくて、私はもともとこうだったの。やっと自分に戻れた」と語っていました。その姿は本当に印象的でした。
「お金にならなくてもやりたいこと」が自分らしさのヒントに
――コンテストを運営する上で大変なこと、工夫していることはありますか?
大島:なかなかうまくいかないことも多いですが、今年から公募を始めたミスター部門では、過去に紹介で出場してくれた男性が自ら企画・運営を担ってくれました。「日本の男性のポジションを上げたい」という強い思いで動いてくれて、とてもうまくいったので、これからは得意な人に任せる体制を整えていきたいです。
――運営において企業との連携や今後の展望については、どのようにお考えですか?
大島:美容業界や地方の方々と組んで、体験の格差をなくしていきたいと思っています。地方では経験の機会が限られがちですが、ファイナリストや企業とコラボすることで、もっと可能性を広げられると考えています。また、英語や自己表現が苦手な日本人の底上げも目指したいです。
――大島さんご自身のこれからの挑戦について教えてください。
大島:ミセスユニバースで広がった横のつながりを生かして、年齢に関係なく美を楽しめるビジネスを展開したいです。オーダーメイドのドレスやメイク、撮影スタジオなどを組み合わせて、女性が自由に輝ける場をもっと広げていけたらと思っています。
――最後に、キャリアに悩むビジネスパーソンに向けてアドバイスをお願いします。
大島:「何もない人」なんていません。コンテストの参加者も最初は「私には何もない」と言いますが、話してみると必ず誰かに与えられる価値があります。もし、ビジネスに迷っていたとしたら、他の人と比べるとか、大きなことをしようとするのではなくて、まずは「本当に好きなこと」「お金にならなくてもやりたいこと」に目を向けてみてください。そこから、自分らしさや貢献のヒントが見えてくると思います。