bizSPA!

パワポはスピード!認知負荷を下げてわかりやすさを極める【20代で年収1,000万円超を目指す人向け、伝わる資料作成講座シリーズVol.5】

スキル
パワポはスピード!認知負荷を下げてわかりやすさを極める【20代で年収1,000万円超を目指す人向け、伝わる資料作成講座シリーズVol.5】

皆さんこんにちは。新しい年度も始まり仕事に慣れてきた人もいれば、心機一転新しいチャレンジにアサインされている人もいらっしゃるかと思います。第4回までの連載でパワポスライド作成の超必須テクニックをお伝えしてきました。

パワポ作成において最重要な点は、相手の認知負荷を下げることです。脳科学の観点からも人は複雑な情報を処理することはそこまで好きではなく、短時間で理解できるわかりやすいスライドを作ることがビジネスを進展させるための大事な要素となります。

今回は、これまでの話の中で特に重要だったポイントのおさらいをしながら、認知負荷低減の具体策を改めて整理します。

伝わるパワポ資料作成のポイント

これまでの連載の総まとめとして、パワポで「伝わる資料」を作るための主なポイントを振り返りましょう。どれもスライドの認知負荷を減らし、内容を一瞬で理解できるようにする工夫です。

まずパワポを開く前に全体設計を!

最初にやるべきはスライドデザインではなく、資料の目的やストーリー設計です。いきなりパワポを開いて項目出しから始める人がいますが、それでは「何を伝えたいか」が定まらず、情報過多な散漫な資料になりがちです。

第1回では「まずパワポを開く人は仕事ができない!」とも述べましたが、まず紙やWordにアウトラインを書き出すなどして伝えたいメッセージと論理展開を練ることが重要でした。スライド作成前に全体構成を決めておけば、各スライドで強調すべきポイントが明確になり、不必要な要素を削る判断もしやすくなります。

このひと手間で完成資料のわかりやすさが大きく向上し、結果的に作業効率も上がります。下記のフレームワークを参考にしながら整理する癖をつけてみてください。

図1:プレゼン前の整理フレームワーク
図1:プレゼン前の整理フレームワーク

スライドデザインの基本テクニック4選

スライドそのものを見やすくするために、以下の4つのテクニックを紹介しました。

1. 視線誘導を意識する
人の視線は通常、ページの左上から右下へ「Z字」に動きます。また大きく目立つ要素に真っ先に引きつけられる傾向があります。そこで情報の配置順序を工夫し、見る人の理解の流れが自然になるよう誘導しましょう。

2. メッセージの配置を一貫させる
スライドごとにレイアウトがバラバラだと、聞き手は毎回どこに注目すべきか迷ってしまいます。特にキーとなるメッセージの置き場所は統一しましょう。

例えば各スライドのタイトル部分にそのページの要点(結論や問いかけ)を一文で書くルールにすれば、聞き手はタイトルを見るだけで「このスライドで何を言いたいのか」をすぐ把握できます。

聞く人の癖や自分のプレゼンの仕方によって、結論ファーストのスライドにするか、導入ファーストにするかは分かれますが、まずパワポ全体におけるメッセージの置き場に一貫性をもたせることを徹底しましょう。

図2:スライドのメッセージ置き所のパターン
図2:スライドのメッセージ置き所のパターン

3. 色に意味を持たせる
デザイン上欠かせない色使いも、統一感と意味付けが大切です。ただカラフルにするのではなく、「強調したい項目は企業ブランドカラーの青」「注意点は赤」など色にルールを設けて活用します。こうすることで、見る側は色を見るだけで情報の種類や重要度を直感できます。

色は目立つ反面、多用するとかえってゴチャついて見えるので、使う色は絞り込みましょう。特に強調色は1〜2色に限定し、「ここだけは見逃さないで」という箇所にだけ使うのがポイントです。それ以外のケースはグレーが最強です。グレーと強調色1~2色のみであとは濃淡で表現していくとスライド全体がすっきりとわかりやすくなります。

図3:色は最低限、そして意味を持たせる
図3:色は最低限、そして意味を持たせる

4. ボックスで情報をグルーピング
スライド上に要素が散らばっていると関連性がわかりにくく、認知負荷が上がります。図のように関連する項目同士はボックスで整理しましょう。これは情報をわかりやすくして相手に伝えるという効果はもちろんのこと、自分自身のロジカルシンキングのトレーニングとしても最適です。

下記にあるレイアウトテッパンパターンを参考に何かを伝えるときにボックスで整理するならどうするか、と考える癖をぜひつけてもらいたいです。

図4:テキスト中心のスライド
図4:テキスト中心のスライド

図5:ボックスにまとめることでわかりやすく
図5:ボックスにまとめることでわかりやすく

図6:レイアウトはこの3パターンをまずは使いこなす
図6:レイアウトはこの3パターンをまずは使いこなす

データは適切なビジュアルで伝える

データビジュアライゼーションの極意は、大きく2つです。データや伝え方に合わせた最適なグラフのタイプを選択することと、わかりやすさの加工を施すことです。

1. 最適なグラフタイプの選択
think-cellにてさまざまな会社の人と話す中で、最適なグラフ選びが難しいという声をよく聞きます。どういう種類のデータなのかがはっきりすると、ある程度グラフタイプ(チャートタイプ)が決まります。

図のように具体的な整理方法をまとめましたのでぜひグラフ選びの参考にしてみてください。なぜこのグラフタイプが良いのかという理由部分は第4回で解説していますので、興味ある方はぜひそちらもご覧ください。

図7:データの種類とグラフ(チャート)タイプの分類表
図7:データの種類とグラフ(チャート)タイプの分類表

2. わかりやすさの加工を施す
わかりやすく強調する方法はさまざまありますが、特に重要な技を6つにまとめました。特に「色で強調」「数字を添える」は相手に対して伝えたいことを強調することができるので、伝えたいことと違う部分を聞き手が注目してしまうというような非効率も削減することができます。

図8:わかりやすさの加工6個の技
図8:わかりやすさの加工6個の技

以上、資料作成のストーリー設計からデザイン4技、データ表現まで、全シリーズを通じて一貫しているテーマは「如何にスライドの認知負荷を下げ、メッセージを伝わりやすくするか」という点です。

スライドは情報を盛り込もうと思えば際限なく盛り込めてしまいますが、常に「見る人の頭の中の負担はどれくらいか?」を意識し、必要な情報に絞り込むことが肝心です。シンプルに整理されたスライドはそれだけで相手への思いやりとなり、結果としてプレゼン全体の説得力・推進力が格段に上がるのです。

スライドを使う最大の意味は、わかりやすさを提供すること

5回にわたってお届けしてきた「伝わるパワポ資料作成」講座も今回が最後です。一貫してお伝えしたかったメッセージは、「スライドを使う最大の意味は聞き手に対する認知負荷の低減であり、わかりやすさを提供する」ということです。

プロのコンサルタントでも新人でも、聞き手に伝わりやすいスライドの基本原則は同じです。本連載で紹介したポイントはどれも今日から実践できるものばかりですので、ぜひ明日以降の資料作成で意識してみてください。

最初は情報を削ることに不安を感じるかもしれませんが、思い切ってやってみるとプレゼンの反応が変わるはずです。「シンプルだけど的確」そんなスライドを武器に、皆さんのプロジェクトが成功することを願っています。ありがとうございました。

【番外編】いますぐ使える!パワポ時短の必須ショートカット集
パワポ作成を時短できる、覚えておきたいショートカット集はこちら

戦略コンサルティングファーム御用達のパワポツール think-cell Japan代表取締役社長。東京大学大学院卒業後、博報堂にてIT、エンターテインメント業界中心を担当、Googleでは旅行業界に対してデジタルマーケティングのコンサルティングを提供。その後はアメリカのスタートアップ企業シナラシステムズにて営業、マーケティング執行役員を務めGo to Marketを実行したのち、台湾AI会社のAppierにて執行役員として日本の事業拡大および東証プライム市場上場を牽引。年間数千ページのパワーポイント資料を作成。留学経験はないが、外資系IT企業ではパワポを武器に海外とのコミュニケーションをとってプロジェクトを推進してきた。2023年8月よりthink-cell Japan株式会社に代表取締役社長として参画。デジタルマーケティング、テクノロジー、データ領域に知見を有しており、その他、東京大学工学部で非常勤講師を務めるなど多岐にわたって活動を行っている。
https://x.com/nobukunimatsu

おすすめ記事