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「切実な収入目的」か「趣味や起業への第一歩」の二極化が進む副業事情【世界の働き方事情・イギリス】

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「切実な収入目的」か「趣味や起業への第一歩」の二極化が進む副業事情【世界の働き方事情・イギリス】

海外在住ライターや海外で働いた経験を持つライターが、各国の仕事事情を紹介するシリーズ「世界の働き方事情」。今回はイギリス現地でフルタイムで働くワーキングペアレンツライターが、イギリスの気になる副業事情を紹介します。

イギリスでの副業の実態

イギリス・ロンドンの街
©️IR Stone / Shutterstock.com

日本のようにフルタイム、正社員で働くことに強いこだわりがないイギリスでは、2つ以上の仕事を掛け持ちしている人が多く、副業(2つめの仕事)をしている人は日本より多いことが予想できます。しかし、今回は日本でも一般的なフルタイムの仕事をメインにしている人が、メインの仕事の合間に2つめの仕事をして収入を得る「副業」について、イギリスでの実情をお伝えしたいと思います。

まず大前提として、イギリスでは公務員を含め、ほとんどの職種で副業は禁止されていません。それにもかかわらず、2020年のコロナ禍以前は一般的なフルタイムの会社員や公務員の人で、副業をしている人は筆者のまわりには少なかったように記憶しています。

ところが、ごく最近の保険会社の調査では、インフレや増税などから生活が以前より苦しいと感じる人が増えており、特に食費と光熱費のインフレはひどく、例えば平均的な4人家族の光熱費は年間2,500ポンド(約49万円、1ポンド=196円換算)とかなり高額です。

生活費の工面という手段として必要から副業している、しなくてはならなくなった人が増えており、調査では16%の人が副業をしていると報告されています。

副収入源として部屋や駐車スペースの貸し出しが一番人気

部屋の貸し出しイメージ

「メインの仕事ではないところで収入を得る」という点では、イギリスで一番一般的なのは自宅の一部屋を貸し出すことです。イギリス政府も推奨する自宅の一部屋を貸し出す制度では、家賃収入のうち1年間で7,500ポンド(約147万円、1ポンド=196円換算)までは無課税という驚きのしくみになっています。

地域によりますが、イギリスでは住宅費がかなり高く、例えばロンドンなどでは日本でいうワンルームマンション(イギリスではスタジオフラットと呼ばれます)の家賃は、最低でも1カ月1,000ポンド(約19万6,000円、1ポンド=196円換算)のため、大家さんと一緒に住むハウスシェアの需要が高いのです。また、自宅の部屋を貸し出すとプライバシーが心配というような人でも、自宅の駐車スペースを貸し出すこともかなり一般的です。

リモートワークのイメージ

実際に収入を得ることが目的で副業をしている人では、コロナ禍以降はリモートでできる事務作業や、オンラインでの家庭教師も人気です。中学生や高校生への家庭教師の相場は1時間25〜40ポンド(約4,900〜7,840円、1ポンド=196円換算)といわれています。

趣味や起業が目的の副業

一般的なフルタイムの仕事をしている人の中でも、細々と副業をしている人が筆者の周りにも以前から一定数いました。先ほど述べた「生活費や貯金工面」が第一目的ではない場合の副業スタイルの典型的なもののいくつかをご紹介します。

趣味やボランティアの一環としてコミュニティに貢献するスタイル

サッカーのイメージ

まずコロナ禍になる前からも筆者のまわりで一番一般的だった副業は、お金度外視で趣味の一環、ボランティアの延長としての副業です。

例えば、スポーツ試合のレフリー(サッカーの場合は1試合30ポンドが相場、約5,880円)や、語学エクスチェンジカフェなどで自分のネイティブ言語を教える(相場はさまざまですが1時間10ポンド程度、約1,960円)などです。収入の足しにするというよりは、余暇の時間の過ごし方のひとつという感覚です。

クリエイティブな趣味で起業を目指し副業するスタイル

ガーデニングのイメージ

写真が趣味という人が記念写真を撮るサービスを提供したり、ガーデニングが好きなら庭のお手入れが難しくなったお年寄りの庭を整備をしたりと、趣味を生かし副業をするということも人気です。波に乗れば、いずれはしっかり起業したいという野心を持っている人も多いでしょう。

また、オンラインに対するハードルが下がっているコロナ禍以降は、料理教室やキャンドルづくりなどのクラフト教室といったオンライン参加型のイベントを開催するのも人気です。

目的に応じて二極化が進むイギリスの副業事情

起業した女性のイメージ

イギリスでの副業の実態は、生活に必要な収入源としての目的の場合はスペースの貸し出し(部屋や駐車場など)、もしくは自由度の高いリモートでの仕事が多く、収入が目的でない場合は、趣味の一環や好きなことで起業を目指し、利益を度外視で自分時間を楽しむという、二極化が進んでいます。

[参考]
Workers rush to take second jobs: ‘I felt I had no choice’
Rent a room in your home: Becoming a resident landlord – GOV.UK

[文/フレッチャー愛]

20代のころからイギリス在住。科学者。フットボールに夢中な男の子の母親として奮闘中。ヨーロッパ各地のマーケット(蚤の市)散策、ワイン、見晴らしのよい絶景スポット、特に海が大好き。世界のどこにいても、毎日を気楽に楽しめるヒントを共有していきたいです!

[All photos by Shutterstock.com]

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