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【世界の働き方事情・イギリス】残業・通勤手当なし!週休3日や管理職の時短勤務もOK

コラム

世界の働き方事情・イギリス2

海外在住ライターや海外で働いた経験を持つライターが、各国の仕事事情を紹介するシリーズ「世界の働き方事情」。今回は、イギリスの職業事情を現地でフルタイムで働くワーキングペアレンツライターが紹介します。

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フルタイムの就労時間は週37.5時間

イギリスの救急車

©️1000 Words / Shutterstock.com

イギリスで地方自治体や会社勤めなどのいわゆるオフィス勤務の場合は1日8時間勤務、週5日勤務(イギリスでのフルタイムの就労時間は週37.5時間。つまり1日7.5時間、そしてお昼休みなどの休憩が1日30分)が最も一般的です。

ただし、医療関係者や消防署勤務、自動車の製造業などでは1日12時間勤務を基本としている業種もわりと多くあります。その場合の多くは、休日が週末とは限らず、3日働くと3日休み(もしく4日働くと4日休み)のサイクルを繰り返すことになります。

通勤手当はなく職場までの交通費は自腹!

ロンドンの通勤風景

Photo : Shutterstock.com

イギリスでは、通勤にかかる交通費は職場から援助されることはありません。そのため、職場までどうやって通うかというのは時間だけではなく、費用の面でも大切なポイントになります。

ちなみにイギリスの地方都市オックスフォード在住の筆者は、街の中心部の職場までバスを使うと往復3.7ポンド(約666円、1ポンド180円換算)かかりますが、自転車で通勤しています。

また、イギリスでは電車が大変高くつくため、例えばオックスフォードはロンドンまで電車で1時間なので「通勤圏内」のように思えますが、1年間の定期代が6,300ポンド(約113万4,000円、1ポンド180円換算)ととんでもない金額になります。

ですから、実際にロンドンで働きたい仕事が見つかった場合、リモート中心の勤務形態にする、または引っ越しを考えるなどの工夫が必要になります。また、日本ほど電車や地下鉄が便利ではないため、特に地方では車通勤による渋滞が深刻です。

残業手当は基本的になし!定時帰宅が当たり前

家族での食事

Photo : Shutterstock.com

日本では「サービス残業」という言葉もあるほどですが、イギリスでは基本的には年俸制のため残業手当は一切ありません。よほどのことがないと残業する人はおらず、定時に帰宅します。

ただし、何かの理由でやむをえず残業したというようなときは、次の日などにその分早く帰宅して帳尻を合わせることがよくあります。だからこそ、イギリスでは定時に帰宅する両親とそろって夕飯を食べて育った人が多くいるわけです。

ただし、サービス業や医療関係、工場など時期的に「人手」が普段より必要になる、休みの人をカバーする必要があるというような場合には、休日出勤をすることもあります。この場合は自ら名乗り出ることが基本で、日ごろの1.5〜2倍の日当が払われます。

定着するリモート勤務

リモートワークのイメージ

Photo : Shutterstock.com

新型コロナウイルスによるパンデミック以降、世界的に一番大きなライフスタイルの変化は「リモート勤務」ではないでしょうか? イギリスでも徐々にリモート勤務が減ってはきていますが、現在もオフィスベースの人たちは平均すると週2日程度は在宅勤務している(もしくはすることが許可されている)と感じます。

また、リモート勤務を部分的に導入(週1日程度)すると生産性は約13%アップするという研究報告もあるほどで、あえてリモート勤務から元通りの100%オフィス勤務に戻そうという動きはまったくありません。

「週休3日」を実験的に導入する自治体も

ロンドンのビジネスパーソンのイメージ

Photo : Shutterstock.com

イギリスでは、なるべく多くの人が能力を発揮できるように、フレキシブルな働き方を受け入れる動きが一層加速しています。

例えば、小さな子どもがいる、介護しなければいけない両親がいるような人は、時短勤務やパートタイム勤務が可能です。これは管理職にもあてはまり、課長、部長クラスのマネージメント責任のある役職の人でも、毎日15時に帰宅というようなことも珍しくありません。

また、最近では、37.5時間のフルタイムを週4日で働いて週休3日にする、という勤務形態も注目を集めています。いくつかの地方自治体が実験的にすでに導入しており、週休3日なのでよりしっかり休息でき、勤務の日には生産性も上がると全体としては「ポジティブ」な結果が報告されています。

イギリスでフレキシブルな勤務形態が可能なことの大きな背景は、働き方がチームプレーではなく個人のスキルベースだからといえます。前回にも触れましたが、スキルや経験を持って転職を繰り返すイギリスでは、「会社が新人を育てる」という構図があまりなく、即戦力がカギとなります。そのため、独立して仕事がこなせる場合は、自分のライフスタイルにあった勤務形態を選びやすくなっています。

関連記事:【世界の働き方事情・イギリス】終身雇用の概念ゼロ!転職でチャンスをつかむ働き方

[参考]
The remote work experiment that upped productivity 13% | BBC
Council reissued with Best Value Notice over four-day week | BBC

[文/フレッチャー愛]

20代のころからイギリス在住。科学者。フットボールに夢中な男の子の母親として奮闘中。ヨーロッパ各地のマーケット(蚤の市)散策、ワイン、見晴らしのよい絶景スポット、特に海が大好き。世界のどこにいても、毎日を気楽に楽しめるヒントを共有していきたいです!

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