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羽田は成田の第三の滑走路!? F1カーも輸送される国際航空貨物の業界はトリビアだらけ

国際貿易において、荷物の輸送は当然ながら、航空輸送と海上輸送の二択しかない。しかし、それだけ大事な業界なのにもかかわらず、知られていない実態がたくさんある。

そこで今回は、二択の中でも航空輸送に注目し、国際航空貨物を国内空港間でトラック輸送する株式会社平野ロジスティクス(神戸市)の益子研一取締役に、国際航空輸送について話を聞いた。

結果として、トリビア満載の話となった。若手ビジネスパーソンには教養の一環として楽しんでもらいたい(以下は、航空ジャーナリストの北島幸司さんの寄稿)。

国内空港間の輸送時に国際航空貨物は道路を走っている

例えば、大阪にある荷主が、メキシコへ荷物を出したいと思ったとする。その場合、日本ではほぼ100%、フォワーダー(航空貨物代理店)が荷扱いを行う。

空港前後間輸送が主に、フォワーダーの輸送責任区間だ。海外へ荷物を運びたい荷主から依頼を受けたフォワーダーのトラックが荷主の倉庫に貨物を取りに行く。

平野ロジスティクスのエアラインラッピングトラック

その大阪にある荷主が、ANA(全日本空輸)の関西国際空港へ、メキシコ向けの貨物を出したとする。フォワーダー(航空貨物代理店)は関西国際空港へ貨物を運ぶ。

ただ、ANA(全日本空輸)は、関西国際空港からメキシコシティまでのフライトがない。

そこで、エアライン自体が輸送契約に基づき、関西国際空港のある大阪と成田国際空港のある千葉の間を、ANA手配の保税トラックで貨物輸送する。そのトラック輸送には、エアラインの便名が付与されている。

自社で貨物を輸送しない航空会社に荷主が貨物を出した場合は、フォワーダー(航空貨物代理店)のトラックが空港間の輸送を代行する。

平野ロジスティクスのエアラインラッピングトラック

平野ロジスティクスの益子取締役によると、

「弊社は、自社で貨物を輸送されるANAやJALさん以外の外資系エアラインの貨物輸送のシェアが高いです。エアラインのロゴ入りトラックも多く走らせており、東関東自動車道路ではおなじみの光景になりました」

という。輸入の場合も同じだ。成田国際空港に集約された国際貨物は、他の空港へトラックで保税輸送になる。

ちなみに、保税輸送とは、関税・消費税の支払いを留保したままの外国貨物を、国内の保税地域(貨物を留置きできる場所)間で運送する行為を意味する。

要するに、国際航空貨物と言いながらも、国内空港(保税地域)間の輸送においては、貨物は道路を走っているのだ。

迅速な輸送が求められる航空貨物でも、国内空港間の距離や輸送効率を考え、トラック輸送が欠かせない手段となっている。

羽田空港は、成田国際空港の「第3の滑走路」

羽田空港が国際化され始めたとはいえ、国際航空貨物の分野では、成田国際空港のシェアはまだまだ高い。盛り上がりは旅客輸送での話だ。

一般航空貨物で言えば、日本の国際航空貨物輸送は成田国際空港を中心として、その他の主要空港と繋がっている。

平野ロジスティクスの益子取締役によると、

「国際航空貨物の拠点は昔から成田であり、われわれの感覚でいくと羽田空港は、成田空港の第3の滑走路というイメージです」

と評されるほど、成田国際空港の存在感の大きさが際立っている。

出荷する荷主やフォワーダーは、トラックの輸送距離として短い「成田・羽田」の双方に倉庫と通関機能を持つと効率的ではなくなる。

結果、日本の国際航空貨物輸送は今でも、成田国際空港を中心に回っているのだ。

その中でも「成田」と「羽田」間の輸送は特に、大量の貨物が年中無休で動いており、その効率性と信頼性が高く評価されている。

例えば、同区間では1日当たり、ジャンボジェット貨物機の1-2機分に相当する量の貨物がトラックで運ばれているほどだ。

F1カーも航空輸送される

平野ロジスティクスのトラック

国内輸送は、道路・線路・海路・空路と輸送モードは多いが、国際輸送において、荷物の輸送は当然ながら、航空輸送と海上輸送の二択しかない。

海上輸送は、石油・石炭、金属、食物など、大量の物資を輸送するイメージがあるが、航空輸送では何を運んでいるのか。

平野ロジスティクスの益子取締役によると、

「航空貨物の利用価値は主に速達性ですので、修理などで動く航空機エンジン、取り扱いに細心の注意が必要な半導体製造装置、開催日の決まっているF1カー、個人購入のスーパーカーなどに加え、ノルウェー産サーモンやワインなどがあります」

という。生鮮や旬な飲食物は航空貨物の「いいお客さん」だ。

今後、航空貨物輸送の需要はますます増加すると予想される。身近なところでは、中国発のEC貨物が、日本の家庭にどんどん入り込むと考えられる。

九州や北海道で進む半導体製造では、諸外国からの部品輸送や工場出荷の半導体完成品の輸出が増える。

それらの変化に合わせて、国内空港間のトラック輸送の効率化やインフラの整備が一層重要となる。特に、物流業界全体での連携や技術革新が求められる中、平野ロジスティクスのような企業の取り組みが鍵となる。

ビジネスパーソンとして航空輸送を中心とした物流に詳しくなっておいて損はない。この記事をきっかけに引き続き、注目してみてはどうだろうか。

[取材・文/北島幸司、写真提供/平野ロジスティクス]

[参考]

よくある質問 日本の海運 – 国立唐津海上技術学校

航空会社勤務歴を活かし、雑誌やWEBメディアで航空や旅に関する連載コラムを執筆する航空ジャーナリスト。YouTube チャンネル「そらオヤジ組」のほか、ブログ「あびあんうぃんぐ」も更新中。大阪府出身で航空ジャーナリスト協会に所属する。Facebook avian.wing instagram @kitajimaavianwing

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