【最強快眠エコノミー!?】トンデモなく眠ることのできるエコノミークラスがニュージーランド航空にあった
新たなサービス誕生
スカイカウチと言う名前でエコノミークラスでも眠ることのできるサービスを始めたのは、今回ご紹介するニュージーランド航空です。南半球の島国で、国際線になると北半球へ向かう長距離路線が多い国ですので、睡眠にこだわりがある国民が多い気がします。その後、ANAはニュージーランド航空のサービスを参考にして追随したANAスカイカウチをエアバスA380に装備し、ホノルル線に登場させています。
スカイカウチを体験
ニュージーランド航空のエコノミー「スカイカウチ」。今回、オークランドまでこのサービスを利用することができましたので、様子をお知らせします。
現在、ニュージーランド航空の日本線は毎日成田空港からオークランドまで1往復をボーイング787-9型機で運航しています。7月の上旬に冬のニュージーランドに出掛けてみました。スターアライアンスのニュージーランド航空は、成田空港第1ターミナルビル南ウィングから出発です。18:30の出発に際し、モバイルチェクインを済ませれば、キオスクと呼ばれる自動チェックイン機で荷物タグを発券し、手荷物を預ける為にカウンターに寄るだけで、簡単に搭乗手続きは終了します。
機内に進むと、目に優しい紫色の照明の中、客室乗務員が迎えてくれます。今回は、日本人でインフライトサービスマネージャーと呼ぶ機内責任者の冨田秀樹さんが乗務していました。
座席を見ると、どのシートにも座面の上にクッションとブランケットが置いてあります。3‐3‐3配列で並ぶエコノミークラス263席のうち、予約数に応じて翼上の窓側を含むA-C席とH-K席の合計最大42席が14のスカイカウチに変身します。予約時に、追加料金を払うと、大人2人、大人1人と子供2人、大人1人と幼児2名など色々な組み合わせで3席を使うことができます。他の座席との違いは、ヘッドレストカバーに「エコノミー スカイカウチ予約席 天空のソファ」と書かれており、またひじ掛けのボタンがリクライニング用と座席をフラットにするレッグレスト部分の操作に使う2つ装備されていることです。また、専用の寝具としてマットレスとブランケット、ピローが前席の下にビニールに包まれて収納されています。
客室乗務員に聞く
冨田さんは、スカイカウチについて「基本的にお客様の機内での過ごし方に合わせてご利用頂けます。離陸後シートベルトサインの消灯後から着陸前に再点灯するまでいつスカイカウチにして頂いても構いません。上空においては、気流の悪い時にシートベルトサインが点灯しても、カウチの状態でブランケットの上からシートベルトを着用していただければ問題ありません。慣れないお客様には私共でベッドメイクの用意をさせていただきますし、足をゆったり伸ばして寛いで頂けると好評です。お食事も可能ですから、長時間ご利用いただけます」と話してくれました。
成田を出発し、ほどなくすると夕食がサーブされます。フライト時間は10時間ほど。食事の終了とともに残りのフライト時間は8時間余り。充実のインフライトエンターテインメントを楽しむか、睡眠をとるか悩むところではありますが、翌朝のオークランド到着後に運転がありますので、休むことにしました。
カウチをセットする
最初にひじ掛けのボタンを押し、3席のレッグレストを上げていきます。3席がフラットになったところで、前席下の金具に用意された別のシートベルトを装着し、中央席のシートベルトと繋げます。その後、寝具を取り出し、3席が覆われるマットレスを敷きます。厚手のブランケットを載せ、ピロー2個を窓際に置くとベッドメイキングは完成です。窓側のアームレストも上にあがりますので、広い空間ができあがります。この時間は5分ほど。この作業のあいだ、他の一般席の人たちからは羨望のまなざしを浴びることになります。
ニュージーランド航空のデータでは、3席分でベッドの長さは155㎝、幅は74㎝とシングルベッドと比べて少し小さめです。それでも足を少し折り曲げてでも横になって機内で眠ることのできる空間は貴重です。一人で74㎝の幅は広く感じても2人では少し狭い程度。以前、家内と搭乗した際には身体を自由に動かすことはできませんでしたが、逆にほどよく固定されてそれはそれで安定して眠ることができました。
今回は、一人ですので身体を後席方向に斜めにして、頭を前席シート側に、足は背もたれ側に倒す形にすると安定して心地良く眠ることができました。色々身体を動かしてみると居心地のいい姿勢が見つかるものです。到着の2時間前には機内の照明が少しずつ明るくなり、朝食の時間になります。眠ることのできる時間は6時間ほどですが、とても身体が休まりました。朝食は、カウチのままあぐらをかいて足を投げ出したりして食べてみました。映画を観てくつろぎ、自宅のリビングにいるようで新鮮で楽しい時間でした。
増便で夜間便が増えてますます人気に
2023年11月30日からは、成田空港からオークランド路線の便が週3便増便され現行便と合わせて週間10便になります。日本発は夕刻便に加え午後便が増え、いずれにせよ夜間に掛かる時間帯です。オークランド発は、昼間便に加え夜間便になり、機内で睡眠できれば往復ともに一日が有効活用できます。ますますスカイカウチの威力が発揮されるとも考えられますね。
自由に身体を動かすことができるので、エコノミークラス症候群とは無縁なだけでなく、ぐっすり眠ることとなり、これだけ体調が管理できるのであれば、追加料金の有効な使い方になります。ニュージーランドへ渡航の際はぜひ試してほしいと思います。
眠れる新サービス
このように素晴らしいスカイカウチサービスのあるニュージーランド航空ですが、今年5月には、2024年から新たに眠れるサービスとしてエコノミー「スカイネスト」を始めると発表しました。
スカイカウチのサービスを行うニュージーランド航空が作ったクラス。エコノミークラスの座席をベッドに変換するスカイカウチとは別の発想で、機内の一角に3段ベッド2セットのポッド(ベッド)を置き、予約した乗客がそのベッドに出向いて眠るという新しいコンセプトのもの。
各ポッドには座席周りと同等の装備があり、アメニティも置かれ、揺れがあった場合でも自席に戻ることなく乗客がシートベルトを締めてポッド内に留まることができます。利用時間の終わりには照明が点灯し、乗務員が眠っている乗客を起こしてくれます。この利用料はエコノミークラス運賃に加えて400~600ニュージーランドドル(日本円で、約35,000円から52,000円程度)になる予定です。
オークランドを拠点とする最長距離で飛行時間が17時間もあるというニューヨークとシカゴ線にて投入が始まる模様で、エコノミークラスに着席しながら予約した時間になるとポッドで4時間眠ることができます。当然のことながら、全身をゆったり伸ばした状態で睡眠がとれることになります。
長時間飛行に備える
ニュージーランド航空は長距離路線の多いお国柄、お客様に睡眠の価値を提供したいとの思いから眠れるサービスは長年の研究で生まれたものと言います。今後、航空機の性能向上により直行で目的地へ向かう路線は増える傾向にあります。このような長時間を身体が自由にならない状態で過ごす乗客に与える身体的負担を軽減しなくてはならず、スカイカウチやスカイネストの取り組みは画期的なものと言えます。
<取材・文・撮影/北島幸司(航空ジャーナリスト)>
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