イケてない中学時代を後悔…華やかな「青春」に憧れる“青春コンプの実態”を専門家に聞く
「制服デートしたかった」「部活動に全力で取り組んで仲間と喜びを味わいたい」。このように思うような青春時代を過ごせず、大人になった今でも後悔を引きずる“青春コンプ(青春コンプレックス)”を抱えている人は多い。
当然、青春時代を取り戻すことは現実的ではなく、他のコンプレックスと比べて乗り越えることは困難に思える。克服するにはどうしたら良いのだろうか。『現代社会の中の自己・アイデンティティ』(金子書房)の編著者で、兵庫教育大学大学院学校教育研究科教授の中間玲子氏に、青春コンプの特徴、乗り越え方を聞いた。
ギャップからくるコンプレックスの問題
青春コンプにとらわれる原因を探っていこう。中間氏はこう考察する。
「“自分が過ごしてこなかった青春時代の過ごし方”と“自分が実際に過ごした青春時代”とのギャップからくるコンプレックスの問題として考えてみます。前者を“仮想青春時代”、後者を“現実青春時代”と仮に呼ぶことにします。
過去を振り返って『今思い返してみるとなんだかんだで楽しかった』と“再評価”できれば、もしくは『もう終わったことだし気にしても仕方ないか』と“現在に投入”できれば、『過去に固執してもどうしようもないからな……』と“諦め”がつき、青春コンプレックスに悩まされることはないはずです」
青春を描いたドラマや漫画も一因に
しかし、自分が実際に過ごした青春時代、つまり“現実青春時代”が今の自分を作っているという思いが強く、かつ今の自分に対する評価が著しく低い場合、青春時代に今の否定的な自分の原因を求めてしまうわけだ。
「実際に現実青春時代がツラく後悔にさいなまれている場合、他人の青春時代の話から仮想青春時代への想いがふくらんで、楽しかったはずの現実青春時代の価値を感じられなくなっている場合もあるでしょう。その結果として仮想青春時代を送れなかった自分自身に対する過度の後悔が芽生え、青春コンプレックスに苦しむことになるのではないでしょうか」
青春を描いたドラマや漫画も、時に仮想青春時代を抱いてしまう背景になりうるという。
「ドラマや漫画は仮想青春時代をより具体的なイメージとして見せてくれるため、『そんな青春を自分も送りたかった』と思ってしまいやすいのでしょうね。青春時代がツラかった人の場合、自分が苦しんでいたまさにその時期が、かけがえのない時期であったことを痛感することにもなります。それにより、青春時代の過ごし方に対する不満や後悔が生じたり強められたりする可能性が考えられます」