「ワーキングプアをなくす」元外資系メーカーCEOが語る、起業のきっかけ
自分の給与に関して満足している人は、一体どのくらいいるのだろうか。働いても報われないことに一抹の不安を覚える人も多いはず。
市民団体「公務非正規女性全国ネットワーク」は、2021年4月から2022年3月の間に非正規公務員を対象にアンケートを実施。そこでは多くが「雇用が不安定」と回答しており、将来が不安だという人が9割にものぼった。
株式会社Compass(コンパス)は、2017年に「日本からワーキングプアをなくす」と言うミッションを掲げ、元外資系メーカー勤務の大津愛氏が立ち上げた。キャリア相談とITを組み合わせ、貧困や企業の人材不足などの問題を解消することを目的としている
人材業界のビジネスモデルを覆すのではないかと注目されている大津氏への前後編にわたるインタビュー、前半の事業モデルについて語ってもらったが、後半では起業したきっかけなどを聞いた。
出産を機に「子育てと仕事」の壁に
大津氏には8歳の子供がいる。大学卒業後、大津氏は外資系企業数社で約10年間働いていたが、出産をきっかけに「子育てと仕事を両立するという壁」にぶつかったそうだ。
「当時働いていた職場は、出産育児ではなく仕事を選んだ女性が多く、妊娠中の私も周囲に気を使うことがたくさんありました。また出産後に育児と仕事をある程度、両立するというのも難しかったです」
そのため出産から3か月後には別の仕事を探し始め、子供を保育園に預けるようになったという。この経験で大津氏は「自分のキャリアステージの変化を理解してくれる企業が少ないと痛感した」と語る。
窓口で「子供がかわいそう」と言われた
「ハローワークの担当窓口では『(幼い頃から傍にいれなくて)お子さんがかわいそうだ』と言われました。一生懸命アドバイスしてくれたのでしょうが、ハローワークの相談窓口には女性もたくさんいます。
女性はこうであるべきという時代錯誤な風潮を強く感じたのを覚えています。これを変えるために、キャリア相談するのではなく、される側の席に座りたいと感じたんです」
そこで大津氏は、ひきこもりや就職支援を手掛けるNPO法人に飛び込んだ。約3年半働き、キャリアコンサルタントとして向き合ってきた人たちは6割以上が就職できたという。さらに新たな課題解決のため「IT事業部」の新設を提案するのだが――。