上司が女性をえこひいき…29歳企画マンの本音に「人事のプロ」の回答は
「なぜ、あんな奴を優遇するのか!?」。上司が特に同世代の社員をかわいがる時、不満を持つ若手社員は少なくない。近年、働き方改革や女性が働きやすい環境作りに取り組む企業が増えているなか、性別や年齢による不平等の解消は欠かせないトピックスだ。
今回は実際に起きた事例をもとに、上司が部下にするえこひいきについて考えたい。本記事の前半で具体的な事例を、後半で人本経営や理念経営の研究・啓蒙に取り組む社会保険労務士による解決策を掲載する。事例は筆者が取材し、特定できないように加工したことをあらかじめ断っておきたい。
【事例】えこひいきにうんざりな男の本音
岡田律次(仮名・29歳)は化粧品メーカー(社員数350人)の商品企画部(正社員30人、男性11人、女性19人)に勤務する。有名私立大学を卒業し、新卒で入り、6年目。この1年半、不満で仕方がないのが、40代前半の上司(課長)が自分よりも1年後から入社した女性・川田愛(仮名・27歳)をえこひいきにすることだ。
川田は、部内の新規商品グループのリーダーに20代としては異例の抜擢をされた。社内では、20代はごく少数だ。社員間の噂では、担当役員や人事部は社内の部署横断組織「女性の管理職育成委員会」に川田を入れて、いずれは管理職にさせようとしているらしい。課長は川田に仕事のトラブルや問題があっても、厳しくしかることはしない。ほかの20代の女性には多少は注意指導をする。同じトラブルをした岡田には、その数倍は厳しい。
岡田は、仕事の量や質は川田よりも数ランクは上だ。ところが、課長は川田を皆の前でほめ称える。1年半で、岡田には1度もほめない。課長はランチには川田を誘うが、岡田には声をかけない。役員らに女性を盛んにPRするが、岡田のことはまず言わない。川田が活躍する「土台要員」の役割を岡田にさせようとしている、と部署の男性社員らがささやく。岡田は今、密かに転職を考えているそうだ。
今は着実に力を身につけるべき
人事・労務に25年ほど関わり、この10数年は人を大切にする「人本経営」や「理念経営」に取り組む社会保険労務士の小林秀司さんに取材を試みた。小林さんは「この上司は、管理職としての言動に問題がある」と指摘する。
「例えば特定の女性を食事に誘うものの、男性には声をかけない。他の言動も、えこひいきと思われかねないものがあります。とはいえ、岡田さんのような男性が上司や女性と同じ土俵に上がり、言動の1つずつに気をとらわれるのは避けたほうがいいと思います。
口惜しいかもしれませんが、今は目の前の仕事を淡々とこなし、着実に力を身につけたほうがいいでしょう。部下が上司を変えるのは、まずできないことです。私も20代前半から半ばにかけて仕えた上司には不満を感じましたが、自分の仕事に意識を向けるように努めました。数年後、ほかの部署の管理職がこの部署のトップとなり、私が不満を感じていた上司を異動させました。
男性が3年間我慢をしても、なおも上司が特定の女性をえこひいきし、強い不満を持つならば、ほかの部署へ異動願いを出したり、転職を検討してもいいのかもしれませんね。通常は、3年間のうちに、このような問題のある管理職には会社として何らかの対応をするはずです」