オリパラで話題の“手話通訳者”が明かす「海外の固有名詞に苦労した」開閉会式の裏側
東京オリンピック・パラリンピックの中継で話題になった、表情豊かな手話通訳者。実は、あの手話通訳者は、私たちがこれまでに見てきた手話通訳とは少し違う「ろう通訳」なのだ。
正直聞きなれないろう通訳とは、一体どんなものなのか。オリンピックの閉会式で通訳を務めた野口岳史さん(@R2_D2_T2)に話を聞いた(※本取材は、後述する「フィーダー」の宮澤さんを介して手話通訳にて行われました)。
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手話通訳とろう通訳の違いは
――これまでの手話通訳と「ろう通訳」はどう違うんですか?
野口岳史さん(以下、野口):一般的に手話通訳は、これまで「耳の聞こえる人」が担当してきました。これに対し、ろう通訳というのは、耳の聞こえない「ろう者が手話通訳をする」というものです。
――耳の聞こえない方が、どうやって音声を手話に通訳するのですか?
野口:音声を聞いてろう通訳に手話で伝える「フィーダー」という、人が間に入ります。ろう通訳者はフィーダーの手話を見て、通訳として手話を行なっていきます。
――フィーダーの手話を放送するのと何が違いは?
野口:耳が聞こえる通訳者にとって手話は「第二言語」なんです。なので、ろう者がみると、アクセントやイントネーションに違和感があるような物足りなさを感じることがありますね。
ろう通訳は「よりわかりやすい手話」
――意味は伝わるけど、カタコトのように見えるという感じですか?
野口:ろう者通訳者は手話が「母語」なので、耳が聞こえる通訳者と比べて表現の引き出しにもバリエーションが豊富なんですね。通訳の利用者に「一番自然でピンとくる表現」を見つけやすいんだと思います。顔のパーツの動きや手の滑らかさにも差が出ます。なので、ろう通訳はろう者にとって「よりわかりやすい手話」なんです。
――情報の伝達だけでなく、会話でありコミュニケーションなんですね。
野口:その点はやはり、字幕より手話ですね。確かに、情報は字幕で理解できます。しかし、ろう者にとって日本語はやはり第二言語なんです。第二言語である日本語を読みながら理解するのに労力がかかるんです。