なぜ中年男性は教えたがるのか?ウザい“教え魔”にならない回避法
トレーニングジムやボーリング場、職場など、聞いてもいないのに積極的に“指導”してくれる「教え魔」という存在が注目されている。明確な統計データはないものの、基本的には教え魔は中高年男性に多く、主に女性をターゲットに自身の知識を披露しているらしい。
中高年男性と言えば、非常にクレーマーが多いことにも注目したい。繊維・衣料、医薬・化粧品など多様な業界からなる労働組合「UAゼンセン」が2020年に公開した調査結果によると、直近2年以内に迷惑行為をしていた顧客のうち、性別に関しては男性(74.8%)が7割以上。推定年齢は50代(30.8%)、次いで60代(28.0%)、40代(18.9%)と続き、クレーマーは中高年男性に多いことがわかった。
教え魔にしろクレーマーにしろ、他人に配慮せずに高圧的な態度を見せることに類似性があり、どちらも中高年男性に多いことは興味深い。男性の問題に詳しい、京都産業大現代社会学部現代社会学科教授・伊藤公雄氏に話を聞いた。
教え魔・クレーマーは対策不可能?
まず教え魔・クレーマーと接する際に配慮すればポイントを聞くと、「適度に自分の主張を伝えながら、相手の意見もキチンと尊重する“アサーティブコミュニケーション”を意識すると良いでしょう」と答えるも、「アサーティブコミュニケーションは結構なテクニックが求められるため、簡単に身に着けられるものではありません」と一筋縄ではいかないという。
結局は当人に教え魔・クレーマーになっていることを自覚してもらうしか現状の打開策がないようだが、「教え魔・クレーマーになるような中高年男性は、“男性主導社会”を前提に生活してきたため、今から女性や子供と対等に接することはとても難しい」と話す。
「もとより、当人に自覚があるかどうかにかかわらず、“男らしさ”の呪縛に苦しんでいる中高年男性は少なくありません。つまりは『男ならベラベラしゃべるな』『男なら感情を表に出すな』『男なら誰にも相談せずに自分一人で決めろ』など、雑談や相談といった様々なコミュニケーションを封じられてきた。また、喜怒哀楽の“怒”しか表情に出してはいけないことが良しとされてきたために感情表現も非常に乏しい」
教え魔は海外でも問題に
「さらには、会社中心の生活を送ってきたため、『要件は何?』『結論から言え!』というような、簡潔かつ効率的なコミュニケーション術しか身に付けていません。仕事の上では感情が足枷になることは往々にしてあり、このようなドライなコミュニケーションはむしろ歓迎されますが、日常生活ではそうはいきません。
コミュニケーション能力に難がある中高年男性が、自身のコミュニケーションを見直し、『教え魔・クレーマーになっていないか?』を柔軟に調整することは容易ではありません」
教え魔・クレーマーには迷惑している人は少なくないが、当人たちが抱える様々な事情にも目が向ける必要がありそうだ。