汚部屋育ちでも東大合格「トイレも風呂も使えない」勉強法
今非常に話題になっている漫画『汚部屋そだちの東大生』(ぶんか社)を知っているだろうか。7年間壊れたままのトイレ、包丁やまな板はゴキブリの通り道。1メートルにも積み重なったゴミの中で暮らしながら、東大に合格したハミ山クリニカさん(@kllinika)の半自伝的な作品である。
漫画には描かれていないが、ハミ山さんは東京大学入学前には、難関の東京藝術大学にも現役合格している。汚部屋の中で、どうやって合格できたのか、支配的な母親との2人での生活はどうだったのか、作者のハミ山クリニカさんをオンライン取材。インタビューを前後編に渡ってお届けする。
汚部屋で育った東大生の半生
――漫画では、お父さんが家に来なくなった頃から家が汚れ始めたと書かれていますが、どのへんから家がゴミ屋敷化していったのか覚えていますか?
ハミ山クリニカ(以下、ハミ山):そもそも散らかっていたんですが、ゴミの地層ができて手が付けられなくなったのは中学生ぐらいだったと思います。小さい頃はまだ家がきれいだったので、母が作ってくれたご飯を食べていましたが、高校生ぐらいの時から台所もゴミの山になって調理できる環境ではなくなり、コンビニで買って自分で食べることが増えました。
――うちがおかしいぞ! と気がついたのも、中学生ぐらいですか?
ハミ山:それが他の家に遊びに行くという習慣がなかったので、比べる対象がなくて分からなかった。お風呂とかトイレが壊れてて、不便だなっていうのはあったんですけど、部屋が散らかっているなとは気がついていなかったんです。小中高、大学生になっても気がつきませんでした。
不便さよりも現状を変えるハードルが
――お風呂とかトイレも壊れたままだと漫画でも描いていますが、どうしてましたか?
ハミ山:災害の時にトイレをバケツの水で流すじゃないですか。トイレは用を足した後にバケツに水で流して、お風呂は銭湯に通っていました。このように、意外と全部なんとかなってしまう。不便さよりも、現状を変えるハードルのほうが高かったんですね。
――災害の時みたいといえば、家の中に入っても靴も脱いでいなかったそうですよね。
ハミ山:玄関と家の仕切りがもはやないので、なんとなく脱いでいる場所があるっていう感じでした。ガラスとか落ちているから裸足じゃ危ない。寝室っていうほどのものではないですけど、そこらへんで靴を脱いでいました。
――扇風機が埋まっていたということですが、なんでそうなっちゃうんでしょうか?
ハミ山:世の中にゴミ屋敷っていっぱいありますが、お金がない訳ではない場合もあります。エアコンは壊れてなかったんですけど、ゴミ屋敷でエアコンをつけると、埃で大変なことになるんです。ゴミの上のほうに何があるかわからないので、埃が全部来ちゃってゲホゲホみたいになる。そこで扇風機を買っていたんですが、ゴミで埋まってしまってまた買うということを繰り返して、最終的には4、5台埋まってたと思います。
――洗濯はどうしていたんですか?
ハミ山:洗濯機は使えたので清潔さだけは保っていて、良くも悪くも順応できたんです。洗濯ができるか、できないかでは大きな違いがあります。洋服が汚くて異様に臭いとなると、周りから「変だよ」って言われて、もっと早く自分の家のことに気がついたかもしれないですね。だけど、壊れていたらいたでコインランドリーに行ったり服をどんどん買い足したりしてなんとかなっていてしまったのではないかという怖さもあります。