“ふるさと納税屋”からの脱却。トラストバンクが目指す「行政のデジタル改革」
生まれ育った地元や応援したい自治体へ寄付できる「ふるさと納税」。2019年6月の制度改正によって、最近では「モノ」だけでなく、農業体験や温泉宿、旅館宿泊などの「体験型返礼品」も注目を集めている。
ふるさと納税サイトは数多くある中、日本全国約1570以上の自治体へ寄付ができるサイトが「ふるさとチョイス」だ。同サイトを運営する株式会社トラストバンクの川村憲一代表取締役に、ふるさと納税事業の現状や行政のデジタル化を推進する理由について話を聞いた。
仕事に没頭。5年間ほぼ休まず
川村社長の出身は北海道。食の総合商社へ新卒で入社する。そして、群馬の高崎にある営業所で最初のキャリアを積む。次の転職先に選んだのは、飲食店などのフランチャイズビジネスをコンサルティングする会社。経営志望者が多く集っていたという。
「当初は前職で営業しかやっていなかったため、経営の“け”の字もわからなかった。周りは猛者ばかりで、自分もこのままじゃ置いていかれると思い、とにかく必死になって働きました」
「ピーク時は1日20時間働いていた」と吐露する川村社長。5年間くらいは休みなく働き続けた印象が強く残っているという。
「夜遅くまで働き、風呂に入るためだけに一度家に戻り、すぐに出勤する。そんな生活を続けながら日々仕事に打ち込んでいました。たまの休日に家族と出かける時も常にパソコンを持ち歩き、時間を見つけては仕事をする。まさにハードワークそのものでした(笑)。その結果、担当加盟店の信頼度も上がり、営業改善につながることができた。他者と比較するのではなく、まず目の前のことと真剣に向き合い、自分ができることを全力でやること。その積み重ねが大事であることを学びました」
ハードワークの末、部下に見限られる
能力が足りなければ、その分を時間でカバーし、成果を出すことに注力した結果、FC店舗経営の部署を統括するマネージャー職へ昇格。約30人の部下を抱えるようになる。しかし、「チームとしてのマネジメントに苦労した」と川村社長は振り返る。
「私自身、這い上がってマネージャーになった自負があったので、当時の自分はどうしてもメンバーに求めてしまった。『俺もできたんだから、それくらいできるでしょ』みたいに。でも相手からしたら、役職が上の人から指示命令されているように見られていた。自分は部下のために思ってやっていたつもりが、部下はもはや私を見限っていたんですね」
象徴的なエピソードとしては、人事の仕事へ異動が決まった際に、部下から送別会もされずにそのままだったという。部下に見放されてしまったことに気が付き、「マネジメントに対する学びを得た」と語る。
「上司と部下の認識ギャップを生み、組織作りがうまくいかなかった。自分が押し付けたことでチームメンバーに見放され、しまいには自分一人だけの組織になっていたのは非常に反省すべきことでした。ただ、この頃の教訓があったからこそ、今のトラストバンクでは風通しの良いチームを作れるよう、意識して組織マネジメントを行うことができています」