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TikTokがインドでも禁止に。中国との対立がアジアで広がる意味

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 近年、中国の経済的影響力が世界に拡大するなか、それに対する反発や抵抗の声が強くなっている。記憶に新しいのはアメリカ政府がファーウェイやTikTokなど中国テクノロジー企業の締め出し政策だ。前回の記事では、アフリカから聞こえる“反・一帯一路”の声について紹介したが、似たような状況にある国がパキスタンだ。

TikTok

TikTokを運営するのは中国IT企業ByteDance社だ © Michele Ursi

パキスタンで武装勢力が活発化

 例えば地元の武装勢力が中国への抵抗を「暴力」という形で表している。南西部バルチスタン州のカラチ市内にある証券取引所で2020年6月、武装集団によるテロ攻撃が発生、警備員2人と警察官1人が死亡、複数が負傷した。4人の容疑者は8分に及ぶ銃撃戦で全員殺害された。

 事件後、「バルチスタン解放軍」が犯行を認める声明を出し、今回の標的は「パキスタンの経済」だけでなく「(中国の搾取的な計画を受け)バルチスタン州における中国の経済的な利権」も攻撃対象としたと発表した。

“コロナ以前”を振り返ると、2017年6月、中国権益への攻撃が続くことから、中国人の保護を目的に治安部隊1万5000人を投入することを決定したものの、2018年11月には、バルチスタン解放軍の戦闘員たちが中国領事館を襲撃し、警察官2人を含む4人が死亡している。

 また、バルチスタン州グワダルにある「パールコンチネンタルホテル」では2019年5月、襲撃事件が発生し、多くの犠牲者が出た。これを実行したのもバルチスタン解放軍で、「中国人や外国人投資家を狙った」という犯行声明を出した。

現地住民が恩恵を受けられず…

バルチスタン州

豊富な鉱物資源が眠っているとされるバルチスタン州。©︎Rizwan

 事件後、彼らは「中国が地元の資源を搾取し続けている、それを停止しない限り中国権益への攻撃を続ける」と発表し、その翌月にも、「今後も“一帯一路”戦略を進める中国への攻撃を続ける」との声明を出した。

 パキスタンでも最も貧しいといわれるバルチスタン州では、天然ガスや鉄鉱石など豊富な資源に恵まれているにもかかわらず、現地住民はその恩恵を受けられない状況にある

 その資源をパキスタン政府が中国を含む外国企業と売買し続ける限り、中国権益が狙われるリスクは依然として残っている。バルチスタン解放軍は「現地の市民」をリクルートしており、パキスタン政府や中国が現在の搾取をやめない限り、解放軍の活動は今後も続いていくだろう。

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