bizSPA!

「萌え萌えキュン」の生みの親、“秋葉原のカリスマメイド”が語った秘密と覚悟

暮らし

 サブカルチャーの発信地として、今や海外観光客からの人気も高い秋葉原。その秋葉原の象徴とも言えるのが「メイド喫茶」です。

 現在、秋葉原には100軒を超えるメイド喫茶が存在していますが、その中でも老舗である「@ほぉ~むカフェ」にはレジェンドと呼ばれるカリスマメイド、hitomi(志賀 瞳)さんが在籍しています。

 6月11日放送の『プロフェッショナル 仕事の流儀』(NHK)では、秋葉原でメイド文化を作り続けるhitomiさんのプロフェッショナルな仕事ぶりが紹介されました。

取り柄のないギャルがオタク文化のカリスマへ

 現在では秋葉原と大阪に7店舗を展開し、所属メイドが300人にのぼるという老舗メイド喫茶「@ほぉ~むカフェ」で、14年もの間お給仕を続けている、hitomiさん。

 彼女は常に笑顔で「お帰りなさいませ、ご主人様!」と店を訪れる客を出迎えます。メイドを目指す女性やメイド喫茶好きなら、知らない人はいない存在となった彼女ですが、幼い頃は何の取り柄もない普通の女の子でした。転機となったのは、彼女が金髪ギャルとして高校生活を送っていた頃、たまたまテレビで見たメイド喫茶に釘付けになった彼女は「新たな自分に会いたい」という気持ちから、「@ほぉ~むカフェ」の面接を受け、合格したのです。

 しかし、当時のメイド喫茶は同じ趣味を持つ人が集まる秘密基地的な場所。見た目がギャルだったhitomiさんはどう見ても場違いで、同僚や客に無視されるなどなかなか受け入れてもらうことができませんでした。

 そんな扱いを受けても彼女はめげず、自分の信じる接客を貫き通しました。そして生まれたのが、オーダーされた商品に「萌え萌えキュン」という言葉を添え、手でハート型を作り、愛を込める「愛込め」と呼ばれるサービスです。この愛込めは、今では多くのメイド喫茶で採用され、メイド喫茶ならではの文化と言える儀式になりました。

 彼女は次第に実を結び、カリスマメイドとしての地位を確立していったのです。また彼女はメイドという現場の仕事だけではなく、「@ほぉ~むカフェ」を運営するインフィニア株式会社の取締役社長に就任。現在はCBO(ブランド責任者)として会社を支え、さらには秋葉原観光親善大使として秋葉原を盛り上げる役割を担っています。

空前の秋葉原ブームと通り魔事件

秋葉原

※画像はイメージです ©Dick Thomas Johnson

 メイド喫茶が世の中に大きく知れ渡ったのは、2005年頃インターネット掲示板の書き込みからドラマや書籍などに形を変え大きな話題となった『電車男』がきっかけでした。作品内ではメイド喫茶が扱われ、ひと目メイドを見ようと、メイド喫茶に訪れる新規客が一気に増えた時期でもありました。

 しかし、ブームに乗ってメイド喫茶に訪れる人の中には、メイドを馬鹿にしたり、他の客を「オタクだ」と冷やかしたりする人もいました。hitomiさんもその標的になります。しかし、彼女はそこでもめげません。一人ひとりきちんと接客をすることで白い目で見る人をもファンとして取り込んで行き、メイドを多くの人に受け入れられる職業として確立していきました。

 そして店にとっても秋葉原という場所にとっても大きな転機となったのが、hitomiさんがメイドを始めて4年目の2008年。17人が無差別に死傷され、日本に大きな衝撃を与えた秋葉原通り魔事件でした。現場となったのは、店の目と鼻の先。秋葉原に悪いイメージを持つ人が増え、秋葉原や店から客足が遠のき、同僚のメイドの中にも親に反対され、店を去る人が増えてしまいました。

 そんな中でもやはりhitomiさんは、メイドとしてできることを模索しながら店に立ち続ける選択をしました。番組によれば、事件を目撃し、秋葉原を避けていたかつての常連客は事件の2年後に店を訪れ、「hitomiさんが頑張っているから再び店に来た」と彼女に話してくれたそうです。いつでも笑顔で客を迎え入れるhitomiさんには、どんなことがあってもまたここに来たいと思わせる魅力があるのでしょう。

12

おすすめ記事