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コーヒーの2050年問題【やさしいニュースワード解説】

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コーヒーの2050年問題【やさしいニュースワード解説】

在京の大手メディアで取材記者歴30年、海外駐在経験もあるジャーナリストが時事ニュースをやさしく解説。今回は、「コーヒーの2050年問題」です。

コーヒーが飲めなくなる!?

「コーヒーの2050年問題」をご存じでしょうか。これまで耳にされた方も多くいらっしゃるかもしれませんが、 気候変動によってコーヒーの適作地域が減少し、コーヒーの収穫が将来にわたって減り、価格にも影響するかもしれないという問題です。いまは比較的安く、おいしいコーヒーが飲める時代ですが、コーヒーの値段が高くなると、なかなかそうもいかなくなります。 特にコーヒー好きの人々には影響が大きいでしょう。

コーヒーの産地と消費国

コーヒーは赤道を挟んで北緯、南緯25度の間の主に熱帯地域で栽培されており、この地域は「コーヒーベルト」とも呼ばれています。主な産地としてはブラジル、ベトナム、インドネシア、コロンビア、エチオピアという国々で、多くは途上国にあたります。

一方でコーヒーの消費が多い国はアメリカ、ブラジル、ドイツ、日本、インドネシアなどで、先進国が多くを占めています。近年の特徴は、中国での消費が急増していることです。以前はインスタントコーヒーの消費が中心だった中国ですが、経済力の向上とともにレギュラーコーヒーの消費が伸び、広大な国土の各地にコーヒーショップが展開され、店舗数も増えています。

コーヒーの生産は、「コーヒーベルト」以外の国や地域でも生産の取り組みが行われており、中国、台湾、日本などにも広がってきています。日本では沖縄県や鹿児島県での栽培が知られています。

コーヒーをとりまく厳しい環境

コーヒー豆は市場で取引される商品でもあり、市況の動きで価格が変動します。このため小規模農家が多い生産者が得られる収入は不安定で、低い水準にとどまっている場合も多くあります。気候変動や病害虫の影響で今後コーヒー生産が減少すると、生産者の収入はますます減り、コーヒー栽培を断念し、他の作物を生産する方向にも向かいかねません。世界的な需要が増える中で、コーヒーをとりまく環境は厳しいといえます。

そうした中で、コーヒーの実の果肉や果皮(カスカラ)を活用した商品を開発し、販売することを通じてコーヒー生産農家の収入を増やす取り組みが広がっているほか、企業が生産者と連携して生産性の向上や品質管理を行う動きなども出てきています。日本のコーヒー関連企業の中にも国内外のコーヒー生産者の支援に積極的に取り組む企業が増えてきています。

コーヒーの歴史を振り返ると、これまで多くの国や地域で、生産者や企業、流通業者がかかわり、消費までの動きを作ってきました。2050年問題はコーヒーに関わる人々が直面する大きな課題ですが、どんな知恵を絞って対応していくか、今後注目されることになりそうです。

在京の大手メディアで取材記者歴30年。海外駐在も経験。

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