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日本発カラオケの原点は複数あった!いつ誰が開発した?【実は日本が世界初】

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日本発カラオケの原点は複数あった!いつ誰が開発した?【実は日本が世界初】

今では、世界中で愛されるカラオケ。もちろん、日本で生まれた娯楽だとは誰もが知っていると思いますが、誰がどのようにつくったかを知っている人も多くはないはず。そこで今回は、世界で初めて日本で生まれたカラオケがどのように誕生したのかをまとめました。

カーステレオにマイクを付けて歌えるように

カラオケする外国人のイメージ
©️PIXTA

カラオケは、英語で「karaoke」と言います。フランス語でも「karaoké」です。英語とフランス語が公用語のカナダ東部にあるケベック州で「Let’s have a karaoke night.(カラオケを今夜楽しもう)」と現地の人たちに誘われた経験が筆者にはあります。

要するに、世界で通用する国際語になっているわけですが、このカラオケは日本でいつ、どのようにして誕生したのでしょう。

そもそも「カラオケ」という言葉自体には、われわれ現代人が想像するカラオケとは異なる意味があります。

伴奏を録音したテープを「カラオケ」(空のオーケストラ)と呼ぶ放送業界の業界用語がそもそも存在していて、その「カラオケ」を使って歌うための専用の装置が後に、複数の人たちによって複数地域で同時期に開発された歴史があります。

その初期の歴史をつくった偉人のひとりに、例えば、東京でカーステレオなどの組み立て工場を経営していた根岸重一さんがいます。

歌が好きだった根岸さんは、8トラック(8トラ)のカーステレオにマイクを付けて歌えるようにしたら面白いとの着想から、手づくりの8トラックプレイヤーにマイクの端子を付けた世界初のカラオケ機の試作機を1967年(昭和42年)に開発しました。

ちなみに、8トラックとは、カセットテープが出てくる前の時代に絶大な人気を誇っていた音楽の再生装置です。

音源については、当時のラジオ放送〈歌のない歌謡曲〉で使われていた演奏のみの音楽をラジオ局から借りて編集しました。その音源を借りるとき、根岸さんご自身も「カラオケ(空のオーケストラ)」という言葉を知ったのだとか。

この試作機は、根岸さん自身が紙に書き写した歌詞カード共に、アイデア商品の販売を手がける国際商品という会社に持ち込まれ、〈スパルコボックス〉の名前で製品化されます。

ただし、カラオケ装置そのものを売り切るのではなく、スナックなどの飲食店に設置して、コインタイマー方式の売り上げを回収するビジネスモデルで市場に投入されます。

同時代を生きる人たちの間で次々と開発された

面白い話として、初期のカラオケは同時期、各地で似たような動きが生まれています。

大阪では、8トラックのカーステレオを応用した小型ジュークボックスにマイク機能をつけた製品〈歌えるジューク〉がミニジューク大阪から1970年(昭和45年)前後に誕生しています。

同じ関西の神戸では、飲食店で音楽を伴奏する仕事をしていたミュージシャンの井上大佑さんが同様の開発をしています。

万博を控えて好景気にわいていた大阪の飲食店に対してレンタルしていた小型ジュークボックスに、人気の曲をアレンジして録音した伴奏用テープを搭載して歌えるようにしたカラオケ装置が井上さんによって開発され、爆発的な人気を博したのですね。

九州を拠点に事業展開をしていた企業経営者の山下年春さんも初期のカラオケをつくった功労者のひとりです。

映画館を経営したり、楽器店を経営したり、楽団や劇団の興行をしたりしていた山下さんは昭和40年代、新人歌手の歌唱指導のための装置として、8トラックの録音・再生デッキにマイクを付け、自らが経営していたレコード会社のオリジナル伴奏用テープをセットにして市販化します。

レコード盤によるジュークボックス、8トラックによるカーステレオなどが世の中に爆発的に普及していった時代だからこそ、同時代を生きる人たちから、カラオケ的なアイデアが次々と出てきたのですね。

カラオケボックスがカラオケの普及を後押し

カラオケボックスのイメージ
©️PIXTA

初期のカラオケ装置はその後、コンテナを使ったロードサイドのカラオケボックスの誕生、都市部のビルのテナントを使った個室のカラオケ店の展開、通信ネットワークにより楽曲を配信する仕組みの進化などを経て全国に浸透していきます。

全国カラオケ事業者協会によると、1960年代後半に誕生したカラオケは1990年代半ばに、参加人口もカラオケルーム数もピークに達しています。以降は減少し転じ、コロナ禍ではガクッと急落するものの、近年はコロナ前の水準に戻りつつあります。

世界的にも人気の高いカラオケは、複数の日本人が日本各地で同時代に発明し、各種の条件が重なって日本各地に、日本から世界に広まっていった歴史がわかりました。

今度、カラオケに行く機会があったら、初期の発明の歴史、日本国中に浸透した経緯、世界への広がりを思い出してみてください。

いつもよりも少し、歌う楽しみが深まるかもしれませんし、カラオケの語源の知識などは、待ち時間などの間を持たせる最適な話題になってくれるかもしれませんよ。

[文・坂本正敬]

[参考]
カラオケソフトのルーツは「MMO」(ミュージック・マイナス・ワン)にあり – 全国カラオケ事業者協会
カラオケ施設の推移 – 全国カラオケ事業者協会
イノベーションに至る経緯 – 発明協会
The first karaoke machine, recognized as a milestone in the history of technology – El Paise
若者どころかバブル世代も知らない? 不便でも愛せたカセットテープ「8トラック」って? – ベストカーWeb
History of Karaoke in Japan – Tokyo Weekender

〈bizSPA!〉元編集長。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉創刊編集長。国内外の媒体に日本語と英語で寄稿し、翻訳家としては訳書もある。技能五輪国際大会における日本代表選手の通訳を直近で務める。東証プライム上場企業の社内報や教育機関の広報誌でも編集長を兼務しており、広報誌の全国大会では受賞経験もあり。

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