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誰をいつ攻撃するか戦地でAIが決める時代に。映画のような「ロボット戦争」も否定できない

ロシアとウクライナの戦争には、AI(人工知能)搭載の無人機が実戦投入され、敵地の爆撃などに使われているという。アメリカも中国も、AI(人工知能)の活用・配備を進めている。

日本の防衛省ですら“AI技術がゲームチェンジャーになり得るものと考えており、重点的な投資を進め、防衛⽤途での実装を早期に実現することが必要”(〈防衛省におけるAIに関する取組〉より引用)と考えている。

米CNNなどの海外メディアによるとAI(人工知能)の軍事利用は後戻りできないポイントを通過したとの話だ。今後、世界はどのようになっていってしまうのか。

そこで今回は、国際政治学、安全保障論、国際テロリズム論、経済安全保障などに詳しい専門家の和田大樹さんに、現在と過去、未来における最先端技術の軍事利用について教えてもらった(以下、和田大樹さんの寄稿)。

攻撃の決定者が人間ではなくなる未来

今後、懸念される技術がAI(人工知能)だ。もちろん、われわれは、AI(人工知能)の恩恵を受ける。

しかし一方で、AI(人工知能)を駆使した自律型誘導兵器、攻撃型ロボットなどは、人類の存亡に影響を与えかねない大きな脅威だ。

何が脅威なのか。従来の兵器と異なり、どこでいつ誰を狙って攻撃するか主体が人間ではなくなる可能性もあるからだ。

現に、ロシアとウクライナの戦争でも、妨害電波を受けて通信が途絶えた無人機が、AI(人工知能)による自立的な判断で継続して敵地に入り込み、目的地の爆撃に成功する例が報告されている。

人間が一切関与しないまま作戦を遂行する、AI(人工知能)を駆使した自律型誘導兵器、攻撃型ロボットの誕生も予想されている。

しかし、当然ながら、AI(人工知能)搭載の兵器を行き過ぎた形で利用すると人類の戦禍が激しくなる恐れもある。

無人機の普及も戦争を「進化」させた

そのAI(人工知能)と組み合わされる無人機の普及も、戦争のやり方を大きく「進化」させた。

例えば、ドローンが世界で普及するにつれ、国家や武装勢力なども攻撃で多用するようになった。

アルカイダやイスラム国などへ米国が攻撃を行う際、無人爆撃機をフルに活用した。

アフガニスタン、イエメン、ソマリアなどでピンポイント攻撃を繰り返し、アルカイダやイスラム国の多くの幹部たちが無人爆撃機で殺害された。

2022年(令和4年)夏には、アルカイダの指導者がアフガニスタンでドローン攻撃により死亡した。

最近では、イスラエルへの攻撃を続けるイエメンの親イラン勢力もドローンを頻繁に多用している。

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もちろん、AI(人工知能)を含む最新技術の実戦投入を規制しようとする動きは専門家の間で広がっている。

しかし、米中露など大国間の軍事的対立が激化する中、AI(人工知能)の軍事利用を止めようという世界が一体となった動きが今後、どこまで進むかは分からない。

〈ドラえもん〉の映画などでは度々、ロボットが戦争するシーンが出てくる。あの光景が今後、現実の世界で現れる可能性は否定できない。

技術革新と戦争、今後の人類にとってこれは、大きな課題と言えよう。

インターネットもテロ組織に悪用された

インターネットも一緒だ。

21世紀に入ると、インターネットの普及が世界中に急速に進み、われわれはその恩恵を受けた。しかし、その技術はテロ組織に悪用された。

9.11アメリカ同時多発テロを実行した国際テロ組織アルカイダは、メンバーのリクルート、テロの計画・実行で、インターネットをフル活用した。

テロの犯行声明も、インターネットを通じて発信された。米国への攻撃を警告する様子を、世界中の多くのメディアが報じ、テロの脅威が世界に拡散した。

同様に、2014年(平成26年)に台頭したイスラム国というテロ組織は、YouTube、Twitter(現・X)、facebookなどをフル活用し、勧誘活動やテロ予告、犯行声明を毎日のように配信した。

世界を震撼(しんかん)させたその当時の様子を、若いビジネスパーソンも子どものころの記憶として覚えているのではないか。

言い換えれば、近年のテロ組織は、インターネットやSNS(会員制交流サイト)がないと十分な活動を行えない。テロ組織にとって1つの生命線とすらなっているのだ。

技術の発展と共に争い・戦争も「進化」する

人類は、時間の経過と共に、あらゆるものを発展させてきた。

日本史や世界史の教科書を読めばすぐ分かる。人類の歴史は争いの歴史である。

人類は最初、争う時に、手や足を使って相手を殴ったり蹴ったりしていた。

しかし、その知性を生かして石器や刀など、鋭く尖った物を武器として次第に活用し始める。16世紀半ばには、種子島に漂着したポルトガル人から鉄砲が初めて日本に伝えられた。

人類は最初、領土の上だけで争っていた。しかし、船が発展するにつれて海でも争うようになる。ライト兄弟が飛行機をつくってからは空軍も強化され、空も人類の紛争の舞台となっていった。

要は、技術の発展と共に、争い・戦争のやり方も「進化」してきたのである。

われわれは時代と共に、技術の恩恵を受ける。しかし、その技術は戦いにも応用される。

この先、人類がどのように進んでいくのか、未来のある若手ビジネスパーソンこそ敏感になり、人類の戦禍が拡大しないよう、それぞれの持ち場で知恵を働かせたい。

[文/和田大樹]

[参考]

“AI兵器”が戦場に 第3の軍事革命・その先に何が – NHK

※ 防衛省におけるAIに関する取組 – 防衛省

専門分野は、国際政治学、安全保障論、国際テロリズム論、経済安全保障など。大学研究者として安全保障的な視点からの研究・教育に従事するかたわら、実務家として、海外に進出する企業向けに地政学・経済安全保障リスクのコンサルティング業務(情報提供、助言、セミナーなど)を行っている。特に、国際テロリズム論を専門にし、アルカイダやイスラム国などのイスラム過激派、白人至上主義者などのテロ研究を行う。テロ研究ではこれまでに内閣情報調査室、防衛省、警察庁などで助言や講演などを行う。所属学会に国際安全保障学会、日本防衛学会、防衛法学会など。多くのメディアで解説、出演、執筆を行う。
詳しい研究プロフィールは以下、https://researchmap.jp/daiju0415

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