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韓国の若者は日本に殺到も中国を警戒。近隣諸国に対する韓国人の本音

コラム, 学び

日本から近隣の国を考える時、日本と中国、日本と韓国、日本と北朝鮮など、見方が一方的になりがちだ。相手からの印象は漠然としている。

さらに言えば、中国と韓国など近隣諸国同士がお互いをどのよう見ているのかについてはますます知らない。

なんとなく、日本と中国、日本と韓国は双方と、ギクシャクした関係があるので、仲の悪い者同士、中国と韓国は仲が良さそうに思えるが、実際はどうなのだろうか。

そこで今回は、国際安全保障、国際テロリズム、経済安全保障などを専門とする和田大樹さんに、韓国人から見た日本、中国など東アジアのイメージを教えてもらった(以下、和田大樹さんの寄稿)

今日の日韓関係は極めて良好

日韓関係は、その時の韓国大統領の対日姿勢で大きく変わる。

前のムンジェイン政権の時、北朝鮮に融和的な姿勢だった一方、歴史などの問題でギクシャクした関係が日本と続いた。最悪の日韓関係とやゆされたほどだ。

しかし、2022年(令和4年)の5月に発足したユンソンニョル政権は日本との関係を極めて重視した。結果、今日の日韓関係は極めて良好な状況だ。

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岸田総理の訪韓やユン大統領の訪日、国際会議に合わせての日韓会談など、両国の外交関係はムン政権の時とはまるで別物だ。

では、リーダが変わっていく中で、韓国の若者の世界観はどうなっているのだろう。無論、若者の日本への認識は、歴史や領土の問題があって印象が依然として良くない面もある。

しかし、日本植民地時代を経験した高齢世代とは違って、日本文化を好む、日本を十分に理解する若者の数は増えている。

韓国の若者が日本に殺到中

例えば、訪日韓国人の多さに注目してみよう。コロナ禍が終わり、訪日する外国人の数が再び激増している。欧米人の観光客の姿が多く報道されるが、一番日本を訪問している外国人は韓国人だ。

昨年、日本を訪れた外国人は2500万人あまりだった。そのうち韓国人は696万人と全体の28%ほどを占めた。2位の台湾(420万人)、3位の中国(243万人)を大きく突き放す。

日本を訪れた韓国人客は、韓国を訪れた日本人客の3倍にもなる。韓国人に最も人気の海外旅行先は日本だ。

しかも、日本の観光庁によれば、日本を訪れる韓国人の年齢層は男性も女性も20代が圧倒的にトップのボリュームとなっている。

観光庁の過去のデータを振り返ると、今から10年前の2014年(平成26年)あたりから若者の比率の急激な増加が始まっている。その時の韓国大統領の対日姿勢で大きく変わる日韓関係の中でも、若者の中で日本の人気は高まり続けてきたのだ。

では、若い韓国人は何を求めてきているのだろうか。距離が近く、コストも安いから日本を訪問する背景もあろうが、若い世代の韓国人の対日意識は昔とは違う。

観光庁によると、日本食、ショッピング、まち歩き、飲酒、温泉入浴、テーマパークなどが目当てだと分かる。都市としては、大阪や京都、福岡が、東京より人気だ。

ポップカルチャーも当然、それなりのニーズがあるが、近年の日本文化だけではない。木村拓哉が出演していた人気ドラマ〈ロングバケーション〉やX JAPANや安室奈美恵のJ-POPなど、一世代前に日本で流行したコンテンツは今でも人気だ。多くの若い世代が知っている。

韓国の若者と日本の若者の認識は対中国や対北朝鮮で一致

韓国の若い世代の世界観は、日本人とも似ている。

アジアでは、中国の経済力や存在感が強まっている。日本と同じように大国化する中国を警戒する声は韓国の若者たちからも聞こえる。

中国も韓国も日本を良く思っていないので、両国の関係は悪くないだろうと思いがちだが、経済の中国依存度が高すぎると警戒する声が韓国国内でも少なくない。中国とどう付き合っていくかは、韓国の若者の間でも大きな問題なのである。

韓国の若者たちは北朝鮮についてはどう感じているのだろうか。筆者には、多くの韓国人の友人が居る。

「自分たちは南北が分断されている時代に生まれ、その中で育ってきたので、それが当たり前だと感じる」

「朝鮮統一などは考えられない」

などといった悲観的な声が圧倒的に多い。平均的な現代日本人の感覚からしても、南北は別々の国に思えるはずだ。

無論、同じ民族なのでいつかは統一できればといった声も聞かれるが、対中国や対北朝鮮では、韓国の若者と日本の若者の認識は意外にも一致する点が多い。

韓国の大統領任期は1期5年だ。ユン大統領の後に、どのような対日認識を持ったリーダーが現れるかは分からない。その人選によって日韓関係も変化する。

しかし、その根底にある感覚として、同世代の韓国の若者が日本や中国、北朝鮮をどのように考えているのか、未来のリーダーとなる日本の若者たちとしては理解しておいて損はない。

[参考]

※ 訪日外国人消費動向調査【トピックス分析】 – 観光庁

韓国人に人気の海外旅行先、日本が不動の1位=韓国ネット「文化が好き」「近い・安い・安全」 – Record China

専門分野は、国際政治学、安全保障論、国際テロリズム論、経済安全保障など。大学研究者として安全保障的な視点からの研究・教育に従事するかたわら、実務家として、海外に進出する企業向けに地政学・経済安全保障リスクのコンサルティング業務(情報提供、助言、セミナーなど)を行っている。特に、国際テロリズム論を専門にし、アルカイダやイスラム国などのイスラム過激派、白人至上主義者などのテロ研究を行う。テロ研究ではこれまでに内閣情報調査室、防衛省、警察庁などで助言や講演などを行う。所属学会に国際安全保障学会、日本防衛学会、防衛法学会など。多くのメディアで解説、出演、執筆を行う。
詳しい研究プロフィールは以下、https://researchmap.jp/daiju0415

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