フジロックCMが賛否両論。「ダサ過ぎる」の声が映し出すロックの現状
大物ベテランが多いロックの現状とは?
それは、アーティストとともにオーディエンスも年を取っているという身も蓋もない事実です。実際に数値にもあらわれています。
アメリカのCBS NEWSが今年3月28日から3月31日にかけて行った調査によると、最も好きな音楽ジャンルでロックは32%で1位だったものの、29歳以下に限定したデータでは、17%にまで降下。ヒップホップ(32%)、ポップス(19%)に次ぐ3位という結果を示したのです。さらに白人と黒人とで分けたところ、ロックを支持する白人が40%だったのに対し、黒人はわずか6%。
これの意味するところは、ロックの主な支持層は30代以上の白人男性であり、もはや若者の音楽ではないということなのですね。
もちろん、若者にウケないからといってダメなわけではありません。ロックの他にも、反抗する若者の象徴だった音楽が時代とともに年老いていった例はあります。それがジャズです。
ファンがともに年老いていく現実
「ロックは1980年代にジャズが置かれた状況に似ている」と論じたのは、1995年から2015年に渡りMTVの経営幹部を務めたビル・フラナガン。「Is Rock ‘n’ Roll Dead, or Just Old?」(The New York Times 2016年11月19日配信 引用部は筆者訳)というコラムで、ロックミュージシャン、ファンがともに年老いていく現実こそが大衆音楽の定めだと語り、同じことがやがてヒップホップなどにも起こり得るだろうと予想しています。
<1980年代後半、いまのディランやストーンズと同様に、フランク・シナトラが70代になったころのコンサートでの出来事だ。かつてシナトラの追っかけだった白髪の御婦人方が立ち上がって、“フランキー、あんたまだイケてるわ!”と叫んだのである。ティーンたちのアイドルだったシナトラは成長し、彼のファンとともに年を取ったということなのだ。>
<そしてもしもこれからの20年で中年のヒップホップファンがカリフォルニアの砂漠地帯を車で飛ばして、白髪のジェイZやスキンヘッドのエミネムを観にやってくるとしたら? ビートルズ絶頂時代にシナトラが歌ったとおり、“それが人生”(That’s Life)だ。年を取る前に死にたがるのは、若すぎて分別がつかない連中なのである。>