日本経済が復活するこれだけの理由。トルコ出身のエコノミストが提言
中国経済が迎える「危機」とは?
――恒大集団の破綻危機が連日ニュースになっていますが、世界経済にどのくらいのダメージを与えるのでしょうか。
エミン:これまでの中国GDPの成長の大部分は不動産セクターが担っていました。恒大集団の負債は33兆円と言われていますが、そもそも中国当局は不動産市況の高騰を恐れ、2018年頃から不動産投資を抑制していました。
そんな状況下でコロナが直撃し、恒大集団が運営する商業施設などからの収入がほぼなくなった。おまけに彼らは電気自動車事業、ミネラルウォーター事業、サッカークラブ運営と本業以外にもビジネスを広げすぎており、破綻危機は多角経営のツケです。不透明な要素も多いのですが、実質的にはデフォルト状態といってよいでしょう。
――もし中国の景気が悪化した場合、日本企業へのダメージは?
エミン:もし中国で不動産の投げ売り(相場や株価が下落基調となり、損失覚悟で保有銘柄を売却すること)が起こると、他の不動産価格も下落します。他のデベロッパーにも波及して、リーマンショック級に発展するかもしれません。しかし、中国経済が停滞することはある意味で、アジア主要国ある日本への需要が戻ってくることでもあります。
賃金上昇を実感するには「時間がかかる」
――日本株が今後上昇しても実質の賃金には反映されず、なかなか好景気を実感しにくい人も多いはずです。
エミン:高い技能が要求される製造業の中にはすでに賃金上昇を実感できている人もいると思います。一般的な給料レベルの人の賃金の上昇が実感できるまではもう少し時間がかかります。
――なかなか投資に回すお金の余裕のない人はどうすればよいですか? 格差が広がっていくことに繋がりませんか?
エミン:貯蓄をする余裕のない人は、自己投資を積極的に行なってスキルを上げることが大切です。ただ、そして小額からでもいいので、貯金するだけではなく、コツコツと、ETF(上場投信)に投資していくことから始めてみましょう。
少額で良いので、資産運用を行うことが大切です。確かに賃金は上がりませんが、日本にはアメリカほどの格差はありません。アメリカがバイデン大統領に代わったことを顕著に、これからは格差を是正する政策が世界的に取られるので、賃金格差の問題が大幅に改善されるのではないかと思います。
<取材/ワタナベヨウヘイ 文/bizSPA!取材班>
【エミン・ユルマズ】
エコノミスト。トルコ・イスタンブール出身。16歳で国際生物学オリンピックの世界チャンピオンに。1997年に日本に留学。東京大学卒業後、2006年野村證券に入社。投資銀行部門、機関投資家営業部門に携わった後、2016年に複眼経済塾の取締役・塾頭に就任。地政学から導き出す経済予測が経営者、投資家を中心に好評。新刊『米中覇権戦争で加速する世界秩序の再編 日本経済復活への新シナリオ』(KADOKAWA)が発売中