フードデリバリー配達員の苦労の実態「行き先も客も選べない」
深夜の怪奇ミッションとは?
「それは深夜2時に、とあるアパートメントへ配達へ行ったときのことです。配達先情報が載った画面には備考欄があります。そこに『はい、配達ありがとう。まず玄関の扉は配達で閉めない。開けたまま(音がする)。帰るときに敬礼して閉める。2階の階段を上がる際は忍者として音を出さない。深夜は特に起きます。部屋に着いたらベルは鳴らさないでください(犬が吠えますから)。倒れないようにノブに品物を静かにかけて、帰るときはありがとう言いなさい……』と、長々こんな文章が記されていました。
わずかな配達料で当たりはずれもあり損した気持ちになりましたが、受けてしまった配達は後からキャンセルできません。仕方なく微妙な日本語を推測しながら慎重にミッションをこなしました」
恐るべし深夜の配達である。だがそのミッションは最後に素敵なプレゼントもあったようだ。
「ミッションが成功だったのか? 後で見たら1000円のチップが入っていました。これなら毎日ミッション大歓迎ですよ!」
配達内容への「評価」に一喜一憂
さらに嫌なのは「評価があること」とも語る。アプリのシステムは、引き受けに行った店と、配達先のお客さん、その両者が配達員に対して良い悪いの評価を付けることができる。
「たまにですが、スムーズに配達を終えた後、なぜか8時間ぐらい経ってから悪い評価が付いたことがあります。今までに2度ほどありました……。きっと部屋で悶々としていて、それでむしゃくしゃしてやったのかと思いますよ。
一番リスキーで気になるのは、お客さんに配達員の電話番号がシステムで通知されてしまうこと。なぜか、配達へ行った先の女性から一度だけ電話が来たことがありましたが、自分は特に困ることはありませんでした。しかし、これが女性配達員ならば、それなりの問題はあると思います。
さらに言うと、1人暮らしの女性がフードデリバリーを注文するのは危険だと自分は思いますよ。悪い配達員もいるはずですから! そいつに住所も電話番号もすべて知られてしまうんですよ。やっていてわかりますが、フードデリバリーは性善説でできていますよね」
今もフードデリバリーの配達員をやっている裕也さんは、交際している彼女や女友達にはフードデリバリーは使わないほうがいいと伝えているらしい。確かに、配達員はどこの誰だかわからない人物だ。話を聞いていて、男性ではあるが筆者も少しだけ不安を抱いた。
<取材・文/逆撫太郎>