フードデリバリー配達員の苦労の実態「行き先も客も選べない」
「ワーキングプアは自分のこと!」と言う青森県出身の堀口裕也さん(仮名・35歳)。20歳で東京の大学へ進学した。まじめに地元の高校を卒業して、まじめに大学も卒業した。新卒で勤務したのはブライダル業界。約10年間勤めた業界だが、コロナ禍により結婚式は激減。
ただ給料を得るためだけに正社員の立場にしがみつきたくないと思い、自主退社した……。現在はフードデリバリーを自転車でやりながら、その日暮らしをしている。そんな裕也さんのフードデリバリー生活の、その辛さと苦労の実態を詳しく聞いてみた。
フードデリバリーに必須!仕事道具3点
「やりたい、やりたくないは関係ない。選べなかった! 正社員ですぐに働ける仕事は見つかりませんでした。東京での生活を維持したいので、ここ1年ほどは毎日フードデリバリーをやっています。なるべく雨の日は休みたいけど家賃と光熱費と食費だけは稼がないと」
そう語る裕也さんは、取材中も自転車にまたがったままだ。ときおり職業病のように携帯の画面を気にする。落ち着いて話を聞くため、喫茶店でお茶することにした。喫茶店と聞くと、すかさず配達エピソードを語り始めた。
「コーヒーなどを配達する時はタオルが必需品! タオルで容器を巻くようにして配達バッグの中で安定させます。バスタオルは最適ですよ。それとマスキングテープ。容器の蓋が緩い際は蓋をマスキングテープで固定します。
あと、マグライトも夜間の配達時には必須ですね。東京都心もすべてが明るいわけではなく、個人宅の表札や、アパートメントの建物名が暗くて読めいないことが多々あります。そんなときにライトは役に立ちますよ」
仕事道具と工夫は、何事にも必要なのだと思った。次に裕也さんは配達の苦労をこう語り始めた。
あなどるな! 住所は1つとは限らない
「この仕事をするとわかりますが、同じ住所の建物って意外に多いんですよ。地図で調べると普通に出てきますが、行ってみると同じ住所に建物が数件あったり。広い敷地に建ったであろう建売りの家なんて、同じ住所なのに10軒以上並んでいますよ。そういうときは1つひとつ表札を見ながら探すんです。
アパートなどは配達先情報に建物名の記載がないことも多く、到着するとアパートが数軒同じ住所に並んでいたりします。でも、一番辛いのは入口がわからないアパートですね。建物の入口が道路に面しているとは限らないんですよ。
専用通路みたいな路地は地図には載らないし、駐車場の奥が入口だったりもします。ほんと苦労しますよ! お客さんにチャットか電話ですぐ聞くようにしていますが」
なるほど、まさに現場のリアルな声である。配達した経験がなければそれはわからない。そして、配達業では、ときに罰ゲームのようなことも起るのだという。