闇営業、枕営業etc.芸能界の黒いイメージを払拭する「お笑い第七世代」の“強み”
いまや、バラエティ番組で大きな勢力となっている「お笑い第七世代」。彼らの立ち振る舞いや物言いに、なんとなくこれまでのバラエティにはない“新しさ”を感じている人も多いだろう。
第七世代はお笑い界をどう変えたのか? なぜ、ここまで需要があるのか?『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)の著者であり、お笑い評論家のラリー遠田氏が解説する(以下、ラリー氏の寄稿)。
20代以下の若手芸人にとって不遇があった
たった1つの出来事や、たった1つの言葉が、世界を一気に変えてしまうことがある。お笑いの世界で「第七世代」という言葉が出てくる前のことを、世間の人の多くは忘れてしまっているのではないか。第七世代という言葉が広まる前までは、新しい若手芸人が世に出てくるのは簡単なことではなかった。
どちらかと言うと、お笑い界では中心になって活躍する芸人たちの「高齢化」が叫ばれていた。『キングオブコント2012』で優勝したバイきんぐ、『THE MANZAI2014』で優勝した博多華丸・大吉をはじめとして、30代後半以上の芸人が新たにスポットを浴びる機会が多く、20代以下の若手芸人はなかなか出て来られなかった。そういう時代が長く続いていた。
2017年にはフジテレビで若手芸人を育成する深夜番組『新しい波24』が放送された。ここに出ていたのは、ゆりやんレトリィバァ、霜降り明星、四千頭身、ハナコ、吉住といった面々。
いま振り返るとなかなか豪華な顔ぶれだったのだが、すでに頭角を現していたゆりやんレトリィバァを除くと、当時はまだほとんど無名の若手芸人ばかりだった。この番組と、その後続番組である『AI-TV』はいずれもさほど盛り上がらないまま終わってしまった。
霜降り明星・せいやが名付け、流れが変わる
そんな閉塞感を打ち破るきっかけになったのは、ある芸人がラジオ番組で何気なく口にした一言だった。2018年12月22日深夜放送の『霜降り明星のだましうち!』(ABCラジオ)の中で、霜降り明星のせいやはこんなことを言った。
「ほんまにその新しい、勝手に次の年号の世代みたいな、『第七世代』みたいなのつけて、YouTuberとかハナコもそうですけど、僕ら20代だけで固まってもええんちゃうかな」
ここでせいやが口にした第七世代という言葉は、若手芸人の総称として使い勝手がいい言葉だったため、すさまじい勢いで拡散していった。そして、あっという間に一般的な用語として定着した。
お笑い雑誌で第七世代の特集が組まれたり、テレビ番組で第七世代関連の企画が多数行われたりした。第七世代として取り上げられる機会が多いのは、霜降り明星、ハナコ、ゆりやんレトリィバァ、ミキ、EXIT、かが屋、宮下草薙、納言、四千頭身、ガンバレルーヤ、3時のヒロインといった芸人たちである。