元巨人・“満塁男”駒田徳広「“脇役”の僕がプロで生き残れたワケ」
試練を乗り越えた自信が役に立つ
――駒田さんといえば観客とケンカしたり、ピッチャーに向かって悪態をついたり、プレー以外の場所でも目立っていましたね。
駒田:決して短気ではないんだけどね(笑)。客とケンカしたり、日本シリーズで相手ピッチャーに向かって「バーカ」って言った、あれはパフォーマンスですよ。プロレスと一緒。だって僕たちはショーの中で生きてきたわけでしょう。球場の外ではあんなことはやらない。紳士ですよ。
独立リーグだった高知ファイティングドッグスの監督時代(2016-2019)もお店をやっていたんです。当時は遠くから来てくれるファンに還元する目的があった。チームを応援してくれる人は選手のファンでもあるから、僕には選手を褒めてもらいたかったんでしょう。でも、そのファンのニーズには応えられなかった。僕は選手たちに、とにかく厳しかったんだと思います。
というのも独立リーグから、NPBでプロになれる確率は限りなく低いんです。数字でいえば97%が野球を諦める。僕は彼らに「野球をしたくて入ってきたなら、1個くらいは試練を乗り越えろ」っていつも言っていた。頑張って、頑張って、苦しんで、乗り越える。そうすれば、野球以外のセカンドキャリアを選んだとしても、それがお前らの今後の自信になるんだぞって思っていた。
嘘をつかないということ
――そういえば、鉄拳制裁をしたり、厳しい物言いをする指導者も減りましたね。
駒田:僕が厳しかったのは野球が好きだから。やっぱり野球が好きという気持ちに嘘はつけない。僕は昔から嘘はつけない人間。でも、人間って嘘をつく生き物なんです。
ツラいことや、嫌なことがあるとすぐに自分に嘘をつく。僕だって弱音を吐きそうなときはいくらでもあったけど、「それでいいのか」っていつも自分に問いかけてきた。
何年か前に、巨人のOB戦があったんだけど、ある先輩がネクタイを忘れたんです。パーティーではみんな正装だから「駒、お前もノータイでいってれくれないか」て頭を下げられた。先輩に頼まれたら「いいですよ」っていいますよね。そのとき、横にもう一人いたから「お前も頼む」「わかりました」ってやりとりがあったんですね。
いざパーティーが始まったら、ノータイなのは先輩と僕だけ。隣にいた彼はネクタイをしめて現れたから、文句をいったら「そんなもんでしょう」って。もちろん他の先輩たちからは睨まれたけど、僕は絶対にそういう嘘はつかない。若い人には、自分に嘘をつかない生き方をしてほしいなって思うんです。