スシロー、全店一斉休業を実施「飲食=ブラック」イメージを払拭できるか
回転寿司チェーンの「スシロー」が2月4~5日、国内全534店舗の一斉休業を実施しました。働き方改革を推進する運営会社、株式会社あきんどスシローが見せた“従業員目線”の英断に各所から賞賛が集まっています。
2019年末から年明けにかけて、幸楽苑や大戸屋といった大手飲食チェーンも一部店舗を除いて休業しており、従業員が働く環境を重視にする流れが業界内で加速しています。
今回はスシローの「全店舗休業」をはじめとした飲食業界の動きについて、働き方評論家の常見陽平氏に話を聞きました。
飲食=ブラックというイメージの払拭
スシローが「機会損失」を度外視してまで休業した背景にはどのようなメリットがあったのか――。
常見さんは「人手不足への対策」と言います。
「地域によっては人が十分に集まらないなか、現場をまわすと、少人数で対応しないといけないので、疲弊してしまいます。また、この局面では店長など社員に負荷がかかり、現在、在籍している社員やアルバイトだけでなく、これから働こうと検討している求職者にもアピールしようという考えではないでしょうか。
飲食=ブラックというイメージの払拭という意味もあり、これは同社に限らず、飲食はむしろ働きやすくやりがいのある職場だとアピールしています」
「多様性が失われていく」
昨年もスシローは「全店一斉2日間休業」を行いました。経営者の意識も徐々に変化しているのかと思いきや、常見さん曰く「一概にそうも言えない」とのことです。
「意識の変化というよりは、前述の理由からやらざるを得ないという感じです。
他社も追随することで、シェアを奪われるのではないかというリスクを回避できます。24時間営業は販売機会を増やしているともいえるが、エリアによっては夜に開いていることが必ずしも売上に貢献しません」
少子高齢化と低い成長率で“国家が弱体化”したことにより、「多様性が失われていく」という意見について、常見さんはこう分析します。
「これは鈴木涼美さんが『週刊SPA!』で書いていた意見ですね。総論では同意しますが、どちらが先かという問題だと思います。皮肉なことに現状、起きているのは国家の弱体化による、後ろ向きな多様化です」