30歳兼業漫画家が「非エリートサラリーマン」を描く理由
忘れられないあの漫画。そこに描かれたサラリーマン像は、我々に何を残してくれたのか。「働き方改革」が問われる今だからこそ、過去のコンテンツに描かれたサラリーマン像をもう一度見つめなおして、何かを学び取りたい。
国友やすゆき、窪之内英策ら「人気サラリーマン漫画」作者に当時の秘話を聞く連載「あのサラリーマン漫画をもう一度」。「ハーバー・ビジネス・オンライン」にて好評連載中の同企画のスピンアウトが、「bizSPA!」でまさかの実現。今回話を聞いたのは『働かざる者たち』『明日クビになりそう』で知られる、サレンダー橋本氏(30)。
自らはサラリーマンとして働く一方、その作品ではリストラ予備軍や窓際族、非エリート社員など職場で日の目を見ない人たちの姿を描いてきた。その作風から“意識低い系の教祖”として熱狂的なファンも多いという橋本氏の創作スタイルはどのようにして確立されていったのか?
『サラリーマン漫画の戦後史』(宝島社新書)の著書として知られる、ライターの真実一郎氏が迫る。
働かない先輩にずっとイライラしていた
――サレンダー橋本先生は、本業はサラリーマンとして働かれているわけですが、『働かざる者たち』に出てくる「働かない人」たちは、自分の回りに実際にいる人がモデルになっていたんですか?
サレンダー橋本(以下、橋本):そうですね。昔いた部署に働かない先輩がいたんですが、僕はわりと真面目に働く側なので、その人のしわよせがくることが結構あって、ずっとイライラしていたんです。
でも、その人も若い頃はエースだったらしくて、それがどう変わっていったのかを周囲の人に聞いてみたら、理不尽な異動をさせられたり、組合問題で干されたり、すごいドラマがあるんですよね。昔は志があったのに、働かなくなってしまったんです。
――そういう「働かない人」たちの背負っている過去の傷が痛々しくて、読んでいてヒリヒリしました。
橋本:最初は「エッセイ漫画を描いてください」という依頼で始めたんです。毎回一話ごとに働かない人を紹介して、働かない人図鑑みたいな、ほのぼのエッセイ漫画になるはずでした(笑)。