「補助的な仕事ばかり…」競争率150倍を勝ち抜いた28歳中途社員の不満
20代は、差がつきやすい時期だ。就職、転職、昇進、給与、結婚で人生が大きく変わる人がいる一方で、スムーズに進まない人もいる。「こんなことでよかったんだろうか」と考え込む人はいるのではないか。
このシリーズ「20代で中途採用入社した社員がぶつかる、見えない壁」 では、20代後半の時期にぶつかりやすい壁の乗り越え方を読者とともに考えたい。本記事の前半で具体的な事例を、後半で人事の専門家の解決策を掲載する。事例は筆者が取材し、特定できないように加工したものであることをあらかじめ断っておきたい。
事例①「上司からつまらない仕事ばかり、ふられる」
酒井田敦さん(仮名)は大手メーカー(正社員数3500人)の営業マン。昨年(2020年)、27歳の時、中途採用で入社、まもなく入社1年が過ぎようとしている。
前職は大企業の子会社(正社員1200人)で、営業部に5年在籍。成績は毎期(半年ごと)、部員250人のうち上位2割に入っていた。上司からの人事評価は、同世代50人ほどの中では高い部類だった。ある日、新卒時からの希望であった大手メーカーの中途採用の求人を見つけ、エントリーしたところ、150倍の倍率をくぐり抜け、内定となった。新しい職場に期待をしつつ入社した。
だが、不本意な1年だった。上司である営業課長からは、同じ部署の部員(20~30代)の補助的な仕事を次々とふられる。「Aさんの営業資料の準備をしてくれない?」「営業会議でBさんの補佐をしてほしい」「Cさんとあの会社の打ち合わせに参加してもらえる?」と、2日に1件のペースでふられる。
同世代の社員も補助的な仕事をしてはいるが、自分は多い気がする。酒井田は前職でのキャリアを否定されたと思い、やる気を失う。上司への不満を持ち、仕事への姿勢も悪くなりつつある。「こんな仕事ばかりじゃ、いやになるよ」。結婚寸前の女性の前でも愚痴をこぼすようになった。
人事のプロの回答①「雑用はせざるを得ない」
今回の酒井田さんに限らず、20代で中途採用試験を経て入社した人の多くは使命感や責任感もあり、気負いがある。雑務的な仕事をつまらないと見なす場合があるのではないか。そこで採用や育成の経験が豊富な人事コンサルタント・川口雅裕さんに取材した。
酒井田さんの悩みに対し、川口さんは「雑用が多いと言っている時点で、“仕事がデキル”レベルではないように思う」とバッサリ。
「大企業、中堅企業、中小企業、ベンチャー企業を含め、会社には雑用がたくさんある。中途採用者に限らず、新卒者も一般職、管理職、役員、社長など全員が何らかの雑用をせざるを得ない。
ITデジタルが普及し、しなくともいい雑用も確かにある。例えば、請求書を郵便局に持っていく時代は終わり、メールで請求書を送ればいい。だが、雑用はなくならない。仕事の中の1つに雑用があるのだから。雑務とうまくつきあうことができるのが、デキル人だと思う」