「ラップをやめたら自分には何もない」28歳、異形のラッパーの11年
一度見たら決して忘れないインパクトと、燃えたぎるマグマのようなバイブスを武器にジャパニーズヒップホップシーンに君臨。「フリースタイルダンジョン」(テレビ朝日系)2代目モンスターとしても活躍し、大きな注目を集める異形のラッパー・輪入道さん(28)。
活動10年を超えた彼のここまでの歩み、そして彼自身にとってのみならず、ラッパーとしても前人未到となる新たなコラボレーションについて話を聞きました。
「ダンジョン」があったら間違いなくハマってた
――「フリースタイルダンジョン」レギュラー出演の反響はいかがですか?
輪入道:ヒップホップに接する人の母数がめちゃくちゃ増えたなあという実感があります。これまでラップを知らなかった人はおろか、音楽自体にあまり興味がなかった人までが見てくれているような感じがします。
もちろんテレビなんで、「あそこに写っていることが全部じゃない」という思いはありますが。もし自分がラップを始めた17歳のころにダンジョンがあったら、間違いなくハマってるし、周囲にも勧めまくってるでしょうね(笑)。
――17歳の頃にラップを始められたのは、どういうきっかけだったんですか?
輪入道:高校の同級生に、般若さんを教えてもらったことですね。衝撃を受けました。中学生の頃からORANGE RANGE、HOME MADE家族などは聴いていましたが、ゴリゴリのヒップホップを聴くのはそこが初めてで。
そこからレゲエ好きの先輩を通じて地元(千葉)のクラブへ足を運ぶようになり、いつの間にか自分がマイク握ってたって感じです。まだ輪入道を名乗る少し前から、ビートボックスをやってた柔道部の同級生と一緒になって、ステージへ上がったりしてました。
――サイファー(※)やクルー(※)みたいな形で、一緒にラップをやっていた仲間はいたんですか?
(※)サイファー:路上などで数人で輪になりフリースタイルラップをし合うこと(※)クルー:仲間
輪入道:いや、基本一人ですね(笑)。特別ラップが盛んな場所ということもなかったんで。だからこそ、たまに地元近くで同世代のラッパーと会うとテンション上がってすぐ仲良くなりました。
――その中で、影響や刺激を与えられた出会いはありましたか?
輪入道:同じ地域に日本と中国のダブルで同世代のラッパーがいて、そいつからは相当教えられましたね。他の同世代ラッパーは、せいぜい17か18なんで「俺が、俺が」って感じで似たり寄ったり(笑)。
だけど、そいつは「文化大革命」とか、社会的なこともテーマに盛り込んでいたりして、視点がデカかった。カッコよかったですよ。今アメリカに住んでて、ラップ自体はとっくにやめちゃってるんですけど、当時の音源はいまだに聴いてみたりしますね。
――歳を重ねるに連れ、活動をやめるラッパーもいたと思いますが、輪入道さんが10年以上続けられた理由は?
輪入道:結局、やめていくやつらは他のビジネスでも生きていける器があったのだと思います。でも自分はラップしかできなかった。「ラップをやめたら自分には何もない」という意識がずっとありましたから、今までやめるという選択肢はないですね。