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給料も物価も安すぎる日本の末路は?仕事を奪い合う未来を専門家が予想

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 新型コロナウィルスが猛威を振るうようになり、1年以上経過したものの政府は一向に適切な対応を見せない。なかでも、そのシワ寄せは中小企業に集中している。中小企業は日本の会社の9割以上を占め、日本経済を支える屋台骨と言っても過言ではない。

東京 仕事

※イメージです(以下同じ)

 前回の記事「日本企業の9割を襲う厳しい現実」では、立命館大学教授の松尾匡氏に菅政権が中小企業淘汰を画策していること、「中小企業は生産性が低い!」という主張がいかに的外れなものなのかを話してもらった。今回は菅政権が中小企業淘汰も含めて、どのような政策を進めているのか引き続き松尾氏に話を聞いた。

菅政権が中小企業淘汰を容認したワケ

 まず、国内の空洞化を招く可能性があるにもかかわらず、なぜ菅政権が中小企業淘汰を容認していたのか意見を聞いてみた。

「人口減少に伴って国内市場が縮小していくため、大衆消費財を生産しても企業の成長は難しい、と政府・財界は考えており、“国内生産”に見切りをつけています。そのため、中小企業を淘汰して成長著しい新興国に拠点を移し、家電製品や自動車、農作物など様々な大衆消費財を生産するつもりです。

 実際、安倍政権下から、企業の東南アジアへの対外直接投資は急増しています。また、2021年4月に承認された“RCEP協定案”では、15か国(中国、韓国とインドネシアなど)の工業製品や農林水産品など、91%の品目で関税を段階的な撤廃を決定し、本格的に国内生産から脱しようとしています」

失業者増加につながる恐れも

菅 義偉氏

画像は菅 義偉氏公式ツイッターより

 松尾氏は「国内市場が荒廃して空洞化することに、政府も財界リーダーの多くも特に問題視していません」とも続ける。そして、今後の私達の生活を輸入品が支えるようになってしまう可能性もあるという。

「東南アジアに限らず企業の海外投資は顕著ですので、海外子会社から送金された外貨(利潤)を円に換える必要があるため、長期的に円高圧力が高まります。円高であれば輸入品を安く買うことができ、日本国民はとりあえず生活することは可能です

 生活用品が安くなったとしても、産業の空洞化によって失業者が増加し、最低限の生活さえままならない恐れもある。私達の雇用はどのように変化していくのか。松尾氏は「中小企業が淘汰されることによる影響は大きい」と言う。

「菅政権は中小企業淘汰を推進していますが、長期的な円高もそのリスクを含んでいます。部品や機械を作って輸出していた中小企業は少なくなく、円高では十分な利益を上げられません。その結果、国内での事業継続が難しくなって海外に出ていかざるを得なくなり、失業者増加につながります

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