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メンタリストDaiGoの差別発言大炎上に見た「教祖ビジネス」の危うさ/常見陽平

学び

 2021年8月7日にメンタリスト・DaiGo氏が自身のYouTubeでの生活保護や路上生活者に対する差別発言をし、物議を醸した。本人は謝罪を繰り返してはいるものの、怒りの声が燎原の火のように燃え広がった。

ネット炎上事件

画像はイメージです(以下同じ)

 炎上と一言でいっても種類は様々だ。今回のDaiGo氏の問題に関しては「勉強不足」「配慮不足」というのが率直な印象だ。ただ、この炎上の構造は直視するべきである。ひとつは、DaiGo氏のようなYouTubeやSNS上での影響力が強い人と、そのファンは「教祖」と「信者」のような関係になってしまうということだ

発言者自身ではなく問題の本質を見る

 SNSのフォロワー数=発言力である現代では、発言そのものが客観的なデータ、ファクトに基づき「正確」なことを言っているか否かではなく、その教祖や信者にとって「正義」だと感じられるかどうかが判断基準となることもある

 実際、私が言論サイト「BLOGOS」でこの問題にふれた際、DaiGo氏を信奉する方々から「叩かれてる人を叩くのは卑怯」「もうこれ以上やめれば」と、たくさんのお叱りを受けた。人の「意見」に関しては正解や不正解もない。賛否があり是非があるのは世の常だし、何かの意見に対して派閥が生まれるのは政治の世界でもよく見かける光景だ。

 ただ問題の本質に迫っているかどうかでいえば、クエスチョンが付く。発言した人に対する情緒でなく、発言自体の本質的な問題に目を向ける努力も必要と思ったのが率直な感想だった

二元論ではない社会問題のグラデーション

 一方の視点では、DaiGo氏がふれた問題と、それがファンたちにおいて支持されたことについて、深く考察する必要がある。コロナ禍以降でより加速した印象もあるが、今の社会は誰しも転げ落ちる可能性はある。ホームレスになるのは「努力が足りないから」という意見もみかけるが、けっしてそれだけではなく、誰でも自分が同じ状況に置かれるリスクを抱えているはずだ。

 生活保護受給者やホームレスの背景には「誰がどう救うべきか」という問題もある。若年層の人口減少、高齢化社会の加速、社会保障の財源も減っている。経済的に不安定な家庭があるのも現状だ。

 なぜ、ホームレスが生まれるのか、この問題を社会保障の上でも治安を考える上でもどのように考えるべきなのか。

 社会問題にはグラデーションがある。善悪や正否の二元論では語れない文脈があり、人それぞれ別々の回答を持っている。DaiGo氏の発言に対して何を思うか。社会的弱者に対する差別的な発言を容認することはできない。誰もがこぼれ落ちる、滑り落ちる可能性がある社会であるということは認識するべきではある

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